ブルートレインの「富士・はやぶさ」の廃止が迫り、連日鉄道ファンが詰めかけている=JR東京駅、小林正明撮影
寝台特急「富士・はやぶさ」(東京―大分・熊本、定員320人)が13日発で引退し、東京駅発のブルートレインが姿を消す。最終列車の切符は10秒で完売し、東京駅には連日多くのファンが詰め掛けるなど異様な盛り上がりを見せる。
平日の午後5時40分過ぎ、東京駅10番線に止まった「富士・はやぶさ」の寝台車に機関車がゆっくり連結されると、100人近いファンがカメラのシャッターを切った。
「黄色い線の内側に下がって下さい」「脚立は使わないで下さい」
駅員の大声が響く。隣の新幹線ホームからシャッターチャンスを狙う人もいる。土日は400人が集まる。ホームの混乱に備え、駅員と警備員ら約20人が警戒する。
列車は東京駅を出発後、門司駅(北九州市)で「富士」と「はやぶさ」(共に6両)に分かれ、大分と熊本に向かう。17〜18時間の旅となる。
ブルトレの一般的な定義は20系や14系などと呼ばれる青い色の寝台車を機関車が引っ張る特急。全盛期の70年代には20列車ほどあったが、新幹線や飛行機に押され、JR化後は急速に減った。今後残るのは北斗星(上野―札幌)と北陸(上野―金沢)、あけぼの(上野―青森)、日本海(大阪―青森)のみだ。
「富士・はやぶさ」は「東京駅発の最後のブルトレ」だけに、ファンの関心はとりわけ高い。今月1、2日、東京都港区の車両センターで開かれた撮影会。線路上から機関車を撮影できるとあって、「鉄道博物館」(さいたま市)の入場券と東京―大宮往復の新幹線チケット付きで5千円の募集(定員600人)に、724人が応募した。
インターネットのオークションでは、9450円のB寝台(乗車券除く)が5万円以上に跳ね上がっている。(峯俊一平)
■最終は13日18時3分、大混雑を予想
56年にデビューした元祖ブルトレの「あさかぜ」(東京―下関)が引退した05年2月末には東京駅のホームに1千人が集まった。ビジネスマンに人気だった寝台急行「銀河」(東京―大阪)は昨年3月に引退。午後11時という深夜の出発だったが、2千人が詰めかけた。
今回、廃止される「富士・はやぶさ」は午後6時3分発。金曜日のラッシュ時と重なるうえに、人気ブルトレだけに、3千人が集まるとも言われる。JR東日本は「ホームへの入場を制限する可能性もある」とする。