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山形新幹線にカリスマ販売員 1日50万円の記録も

2009年5月7日

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写真ワゴンを押す茂木久美子さん。アイスを食べたいけれど声をかけにくそうな男性客の視線を感じたら、「はいっ」と笑顔で立ち止まる=山形新幹線「つばさ」の車内

 JR山形新幹線に「カリスマ車内販売員」がいる。財布の口が堅いご時世に、売上額は平均的な販売員の約1.2倍。ざっと2倍強の「1日50万円」を達成したこともあり、企業や役所などから講演依頼も相次ぐ。買う気にさせる秘訣(ひけつ)は何か。実際の車内販売に密着した。

 天童市在住の茂木久美子さん(29)。JR東日本の車内販売を担う日本レストランエンタプライズの社員だ。幼いころは飛行機の客室乗務員にあこがれたが、高校卒業後、「もっと身近な」新幹線の乗務員の道に進んだ。最近の売り上げ成績は約1300人いる同僚の中でもトップを誇る。「1日50万円」は数年前のゴールデンウイークに山形―東京間を1.5往復した際の記録だ。

 4月中旬。茂木さんと山形駅から上りの「つばさ」に乗った。ちょうど昼時。茂木さんは笑顔でワゴンを押し始めた。「お砂糖とミルク、いんだっけか」。コーヒーを注文した年配客に山形弁で返した。以前は封印していたが、今は「お客様に喜んでもらえるから」と使っている。

 車内を1往復した時点で客層を見極め、売れ筋を把握した。

 「今日はグループや年配客が多い。花見かな。年配客には幕の内弁当が人気なんです」

 観察力だけではない。並みの販売員は片道3時間で3〜4往復がやっとだが、茂木さんは7往復。それが売り上げ増に直結する。スピードの秘密は、勘定にあった。右ポケットに100円と500円玉、左ポケットに10円と50円玉を用意。客の手の動きから出される金額を察知、間髪入れずお釣りを渡す。

 その茂木さんも、入社当初は「なぜ買ってもらえないのか」と壁にぶつかった。突破口になったのは上司の助言だ。「買ってあげたいと思われる人になればいい」。自分なりのやり方を一歩一歩確立していった。

 ワゴンを押しつつ客を観察するのもその一つ。「パソコンで仕事中だからコーヒーを飲みたいかも」「出張帰りなのにお土産を持っていない」。そんな客がいれば歩く速さを落とす。また列車の進行方向に歩く時は、後ろ向きでワゴンを引く。客の表情が見えやすいし、席からはみ出ている客にワゴンをぶつけることもなくなり一石二鳥だ。

 菓子や飲み物は売れ残っても翌日に回せるが、弁当は無理。そこで「お土産に」と複数の弁当を勧める作戦も編み出した。

 近藤昌昭・広報室長は茂木さんをこう評価する。「迷っている客を捕まえる力が他の販売員たちよりも優れている。親しみやすさや観察力という天性の力に加え、努力もしている」

 乗車前の緊張感は1年目から変わらないが、乗ってしまえば「お客様との会話が楽しい」。仕事場であり、出会いの場でもある新幹線という「舞台」。まだまだ降りるつもりはない。(佐藤恵子)

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