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ミニ新幹線400系つばさ廃車へ 在来線で高速の知恵は

2009年7月2日

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 新幹線の電車が在来線で走る――。「ミニ新幹線」とも呼ばれるこの構想は、92年に開業した山形新幹線で初めて実現した。初代となる400系車両の「つばさ」は、今年度限りで廃車となる。それまでの新幹線車両より小さな車体で時速240キロを達成するため、新たな工夫がちりばめられていた。

 新幹線のレール幅(軌間)は1435ミリ。在来線の1067ミリに比べ約40センチ広い。山形新幹線開業にあたっては、在来線区間の軌間を広げて乗り入れを実現した。

 ただ、トンネルやホームなどの設備はほぼそのまま。400系を在来線車両並みに小さくしないとうまく走れない。一方で、新幹線区間は時速240キロを出せないといけない。「最も神経を使ったのが、車輪や車軸を組み込んだ台車の開発だった」と、400系の開発に従事したJR東日本・運輸車両部次長の田島信一郎さん(56)は振り返った。

 200系など当時の新幹線車両の台車は、車軸の間隔が2.5メートル。在来線の特急車両は2.1メートルだった。これが短くなるほど高速での安定性は悪くなる。

 鉄道総合技術研究所の技術顧問、岡本勲さん(64)によると、JRが発足した87年ごろから台車の研究を始めた。急カーブのある在来線区間を想定した計算値などから、たどりついた車軸間隔は2.25メートル。「試作した台車を試験台に載せて動かした結果、240キロは安全に出せることを確認し、問題ないと判断した」

 JR東日本は、この研究をもとに新たな台車を製造し、90年11月の試運転で使った。「車両として成り立つのかドキドキだった。時速240キロで走れたことで、半分以上クリアできた気分になった」と田島さん。91年9月には、この車両で当時国内最高の時速345キロを記録した。

 新幹線と在来線では、保安装置(ATCとATS―P)や交流電源の電圧(2.5万ボルトと2万ボルト)などに違いがある。新型車両には、両方に対応できる装置と切り替え機能が必要だった。新幹線ホームとのすき間を埋めるための乗降口のステップ、福島駅で東北新幹線「やまびこ」と分割・併合するための連結器、といった設備も加わった。

 先行車の発注時に車両課長だった鉄道コンサルタントの佐藤芳彦さん(63)は「従来の新幹線より長さが5メートル、幅も50センチ近く縮まった。その小さな車体のどこに何を収納するかで知恵を絞った」と話す。

 シルバーを基調とした塗色と先頭は航空機のような形。「山形の人は白い新幹線が来ると思っていた。21世紀志向の高速列車は違うんだと、財界人や政治家に力説して納得してもらった」。デザイナーとしてかかわった剣持デザイン研究所所長の松本哲夫さん(79)は打ち明ける。

 車両開発と並行して、在来線の軌道を広げる改軌工事も苦労の連続だった。スピードアップのため、カーブの改良も施した。在来線区間での最高速度は、それまでの95キロから130キロへと上がった。

 新幹線と在来線の直通運転を検討し始めたのは国鉄時代末期。フランスの高速鉄道TGVは、高速線と在来線の軌間が同じで、在来線へも乗り入れていた。JR東日本会長を務めた山之内秀一郎さん(故人)は「一つのヒントになった」「日本でも同じことができる」と、ある雑誌に書き残している。

 在来線には普通列車も走るため、レールを何本にするかが課題だった。新幹線と在来線を別々の軌間で走らせるには、レールは3本または4本いる。だが、ポイントが雪で動かなくなる恐れなど解決すべき問題が多かった。山形新幹線実現に奔走した前衆議院議員(民主、当時は自民)の鹿野道彦さん(67)は「92年の山形国体に間に合わせたかった。思い切ってレール2本でという判断になった」と語る。結局、その区間を走る普通列車も、新幹線の軌間に合わせた特別仕様の車両にすることで「レールは2本」に決着した。

 開業時、400系は東京・山形間を最短2時間27分で走り、従来より30分以上短縮した。在来線へ乗り入れる手法は、97年開業の秋田新幹線にも採用された。

 製造された400系は全部で12編成。老朽化のため、すでに9編成が秋田新幹線開業時に登場したE3系車両へ置き換わり、400系は今年度ですべて姿を消すことになった。

 400系はJR東日本が開発した初の新幹線車両だった。その後、E2系など次々に新車両が登場、時速320キロ運転を目指す次世代のミニ新幹線用車両の開発も進む。田島さんは「400系で培われたものが、今も生かされている」と話す。(米山正寛)

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