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リニア中央新幹線、国の審議開始 地元調整難航か

2010年3月4日

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写真実験線を走るリニア新幹線の試験車両=2009年4月、山梨県都留市表拡大  図拡大  

 東京―大阪間を67分で結ぶ構想のリニア中央新幹線を、法律に基づく新幹線計画として認めるかどうかを決める議論が3日、国土交通省の審議会で始まった。JR東海は自己資金での建設を表明するが、採算を疑問視する声もくすぶる。駅やルートをめぐる地元との調整も難航しそうだ。

■採算に疑問、慎重論も

 「日本の交通史の新たな1ページになる」。3日の交通政策審議会・鉄道部会で、国交省の三日月大造政務官は強調した。

 審議会はJR東海からの聞き取りや試算の検証を行い、整備計画への格上げの是非を答申する。JR東海は「早く結論を」と求めるが、委員からは「東海道新幹線があるのに、必要なのか」「負の遺産を抱えるわけにはいかない」など慎重な意見が相次いだ。国交省政務三役の一人は「2、3年はかかる」とみる。

 1964年開業の東海道新幹線はダイヤが物理的な限界に近い。また、災害時や設備更新時の代替輸送手段として、JR東海は中央新幹線の必要性を訴えてきた。ただ、東北・北海道、北陸、九州の各新幹線は、整備計画に格上げされてから40年近くになるのに、まだ完成していない。税投入を前提とした枠組みでは実現は遠いとされてきた。

 ところが07年、JR東海が「東京―名古屋間を自費で建設する」と表明し、実現へのハードルは低くなった。東海道新幹線の輸送力強化などが一段落し、リニアに5兆円余の自己資金を投入しても株主への安定配当を確保できると判断した。航空機の利用者を取り込み、収益力を上げる狙いもあった。

 JR東海は、東京(品川)―大阪(新大阪)間が開業すれば、東海道新幹線とリニアを合わせた輸送量が、08年度の東海道新幹線の輸送量の約1.5倍になると試算する。料金は、現行の東京―新大阪ののぞみ指定席より約1千円高い1万5千円と想定する。

 しかし、高速道路の休日割引の影響などで09年の東海道新幹線の利用者は大幅減。審議会でも、需要予測に対して「悲観的な予測も必要」との指摘が出た。

 試算だと、リニア方式の建設費は従来型新幹線の約1.3倍、維持費は約1.7倍。コスト高を上回る収益増が必要だが、JR東海は詳しい収支見通しを明らかにしていない。3兆円以上残る旧国鉄債務の金利上昇リスクもある。

 仮に建設途中で資金難に陥った場合、「税投入」の議論が浮上する可能性もある。財務省幹部は「民間がやるというものを止めるわけにはいかない。ただ、後で泣きついてきても絶対にお断りだ」と予防線を張る。

■ルート調整、先送り?

 ルートや駅をめぐる課題も山積している。

 JR東海は計画公表時から、東京―名古屋間をほぼ直線の286キロでつなぐルートを希望。これに対し長野県は、南アルプスを北に迂回(うかい)し、人口の多い県中部を通るルートを希望する。

 JR東海の試算では、直線ルートだと東京―大阪間の建設費は9兆300億円だが、迂回ルートだと9兆6800億円。同社は「民間企業の体力の範囲内でしかできない」(松本正之社長)と否定的だ。ただ、長野県も全国新幹線鉄道整備法の目的の一つに「地域の振興」があることを根拠に譲らず、調整の見通しは立っていない。

 直線ルートにする場合も技術的な課題がある。2千〜3千メートル級の山が連なり、活断層も近い南アルプス周辺に長さ約20キロのトンネルを掘る必要があるためだ。JR東海は「適切な工法を選べば可能」との立場だが、掘るのに10年程度かかるという。

 中間駅の負担も課題だ。JR東海は品川、名古屋、新大阪のターミナル駅以外に、神奈川、山梨、長野、岐阜、三重、奈良の各県への中間駅設置を想定するが、建設費は地元の全額負担を求める方針。

 だが、地上駅(山梨、長野、岐阜、三重)の建設費は350億円、地下駅(神奈川、奈良)だと2200億円に跳ね上がる。自治体や民主党からは国の財政支援を求める意見もあるが、国交省は否定的。3日の審議会で、国交省鉄道局幹部は「駅をめぐる地元との調整は事業主体にゆだねたい。この場での議論はそぐわない」と突き放した。(伊沢友之、澄川卓也)

     ◇

 《リニア中央新幹線》 東京から甲府市、名古屋市、奈良市の付近を通って終点の大阪まで、最高時速500キロの超伝導リニア方式の高速鉄道で結ぶ計画。整備新幹線の路線の一つとして1973年に基本計画が決まった。JR東海は2007年、東京―名古屋を自己資金で建設し、25年に開業させる目標を公表。昨年末に国土交通省に提出した報告書では、東京―大阪間の最短所要時間を67分、建設費を9兆円台と試算した。山梨実験線でのリニアの試験走行は97年に始まり、累積約77万キロを走行した。

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