東急東横線渋谷駅オリジナルジオラマ=東急車両製造提供
昭和40年代の渋谷駅周辺=東京急行電鉄提供
大規模再開発の本格化で変わりゆく渋谷を記憶にとどめてもらいたい――。東京急行電鉄の子会社、東急車両製造(横浜市)が、東京・渋谷の象徴的な建物や線路などをぎゅっと詰め込んだジオラマをつくった。郷愁を誘うその姿が、大人の関心をひいている。
縦60センチ、横45センチの台座には、若者に絶大な人気の専門店ビル「SHIBUYA109」、駅に直結した東急百貨店の東横店のほか、道玄坂や忠犬ハチ公像などが並ぶ。線路では、パンタグラフなどを忠実に再現した東急の5050系車両(4両編成)を走らせることもできる。
鉄道ブームに目を付けた東急百貨店が、今年の福袋向けに「電鉄系百貨店の特色を出した企画ができないか」と昨年10月末に東急車両に話を持ちかけたのがきっかけ。
東急車両で鉄道車両や鉄道関連グッズの販売サイト「電車市場」を担当する海江田広さんが応じ、ジオラマ製作のディディエフ(大田区)がつくった。
渋谷駅周辺では、東口の東急文化会館跡地で、地上34階建ての再開発ビル「渋谷ヒカリエ」の建設工事が始まっている。2012年度には、東横線が渋谷と池袋を結ぶ東京メトロ・副都心線に乗り入れ、ホームが地下に移る。
海江田さんは「渋谷はこの数年でガラッと変わってしまう。高度成長へと離陸する昭和30年代の渋谷の風景にノスタルジーを感じる世代の関心に応えたかった」と企画・立案のねらいを語る。
すでに解体された東急文化会館は当初、盛り込む予定がなかった。だが、「東口のシンボルと言えば、文化会館屋上の五島プラネタリウムの銀色のドーム。厳密に『いま』にこだわるのではなく、だれもが思い描く渋谷周辺の街並みを凝縮したものにした方がいい」というチーム内の声に押されて配置したという。
企画決定からの期間が短かったため、福袋として売り出したときは商品目録のみ。2月に横浜市で開かれた「ヨコハマ鉄道模型フェスタ」に試作品を展示したところ、来場者から「完成品は、どこで手にはいるのか」といった問い合わせが相次いだ。これを受けて、1日から12日まで、東急百貨店本店、東横店の特設コーナーで、車両を走らせる共同販促を展開する。価格は15万円(税込み)。
電車市場楽天店(http://www.rakuten.ne.jp/gold/tetsu/index.html)でも発売中。(鈴木淑子)