伝統の麦焼酎に酔う 壱岐(いきの)島 (長崎県)2006年12月29日 玄界灘の真っただ中に取り残された島は、意外にも丘陵地に田畑が広がる豊かな穀倉地だった。降り注ぐ太陽と心地よい海風に抱かれて、米や麦がよく育つ。島で一番高い岳ノ辻(213メートル)の豊富な伏流水が、穀物も島の暮らしも支えてきた。
◇ 壱岐は麦焼酎発祥の地。米や麦がとれ、いい水があると酒を造りたくなるのは現代人も古人(いにしえびと)も同じらしく、焼酎造りは16世紀ごろから盛んだったという。かつて、もろみを釜で炊いて蒸留したことから「火酒」と呼ばれた。蒸留技術は中国から伝わった。壱岐は、1700年前の弥生時代、中国の「魏志倭人伝」に「一支(いき)国」としるされ、古くから日本とアジア大陸を結ぶ文化の中継地だった。 「米も麦もとれるが、米は課税が厳しかった。麦は年貢がなかったとじゃけん、麦で焼酎を造りよったのが始まりです」 壱岐焼酎『山乃守』の杜氏(とうじ)、有永嘉弘さん(68)が、櫂(かい)でかめを撹拌(かくはん)しながら言う。ほの暗い仕込み蔵に、こもを着た大きなかめが並んでいる。白濁した海に静かな渦が巻く。一日ひと櫂ふた櫂。約3週間、もろみが力をつけて発酵していく。山乃守では代々、カメ仕込みの製法を守り継いでいる。 原料の配分は麦が3分の2、米麹(こうじ)が3分の1。それが理想的な比率とされ、七つある蔵元が江戸時代から厳格に守り通している。それでも酒は生き物。蔵によって味の違いが出る。 「壱岐の焼酎は、蔵元が味を決める。杜氏は蔵の味を守り継いでいくのが仕事です」 ◇ 伝統の酒は1995年、世界貿易機関から、材料と製法を指定した「国際ブランド」として保護されることになった。高い麦の香り、まろやかな甘さと深いコク。世界の銘酒をつい飲みすぎて、滞在が1日のびた。 (文・イラスト 遠藤ケイ) 見どころ
見どころ福岡と長崎・対馬の中間に位置し、玄界灘に面した全国で20番目に大きな島。土地全体の約3割が農用地で、比較的なだらかな地形をいかし米や葉タバコ、肉用牛などを生産する。ほかに漁業や観光業も盛ん。
●猿岩猿にそっくりな奇岩。高さ約45メートルの大猿が水平線を眺める姿はほほ笑ましい。
●壱岐・原(はる)の辻展示館弥生時代の「一支国」の王都とされる原の辻遺跡は、総面積約100万平方メートル。発掘された出土品の展示や復元作業を見学できる。
●筒城浜海水浴場「日本の水浴場88選」に選ばれた。夏には浜にネットを張り、近海でとれた魚を放流する「魚と泳げる海水浴場」となる。
●湯ノ本温泉海に浮かぶ島々と夕日が美しい温泉郷。神功皇后が応神天皇の産湯をつかわせたという伝説がある。
●壱岐・壱岐綱引大会2月18日[日]、石田町で。同町の町おこしとして始まったが、今では九州以外からの参加があるほどの大きなイベント。
◆案内壱岐観光協会 電話0920・47・3700 壱岐市役所 電話0920・48・1111
|