素朴で豊か、神の島 神集(かしわ)島(佐賀県)2007年02月23日 神秘的な名だ。旅は直感と想像力。いつも、そんな風にして旅が始まる。だが、佐賀県のはずれ、湊から船に乗ったとたん、乗り合わせた人に声をかけられ、出ばなをくじかれた。
◇ 「島に何の用で行かれるとですか?何もなかとですよ」 島で区長をしているという高崎正幸さん(55)だった。釣り以外に観光的なものはなく、食堂もないらしい。 島の名は、古来、神功(じんぐう)皇后が朝鮮出兵の際、神々を集めて海上の安全と戦勝を祈ったことに由来するという。島は大陸を結ぶ航路上にあり、渡航船の寄港地として栄えた。 「歴史はあるとじゃけん、時代に乗り損ねたとよ。『バブル』のころに唐津から橋を架ける話があったけんが、島のモンが反対してつぶれよった」 「橋ができれば、いいこともあるばってん、悪いものも入ってくる。それを恐れたとよ。神の島じゃけん」 案の定、閑散としていた。集落は海岸線に連なっているが人影は少ない。高崎さんが、気の毒がって自分のスクーターを貸してくれた。だが、わずか2キロほどの海岸線を往復すると、もう何もすることがない。 島で一つの雑貨屋に、名物「石割豆腐」があった。海水のニガリで造る豆腐で、硬くて石が割れたという笑い話がある。店の奥でしょうゆをかけてもらって食べた。絞ったオカラのような食感で、ほんのりと潮の香り。 ◇ 日が傾いたころ、沖から一斉に船団が帰ってきた。船上の男たちはみんな黒いウエットスーツを着た海士。家々からドッと人が駆け出してくる。水揚げされたかごの中はアワビの山だった。作業を手伝った褒美にアワビを1個むいてくれた。それを帰りの船の中で、ごりごりと食べた。 素朴で、世俗に荒らされていない。こんな島があってもいい。 (文・イラスト 遠藤ケイ) 見どころ
見どころ玄界灘に突き出した東松浦半島の周囲に点在する「玄海諸島」の一つ。玄武岩で形成され、台形状の形から「軍艦島」とも呼ばれている。
●住吉神社岬の先端にあり、石の鳥居が海中に建てられている。古来、航海・豊漁の守り神とされている。
●蒙古碇(いかり)石吉神社の境内にある。元寇の折に、蒙古軍が暴風雨に見舞われ捨てたといわれる。長さ約2.7メートル、最大幅約0.4メートルと、玄界灘沿岸で発見された碇石30個のうち、湊の八坂神社のものに次いで大きい。
●ハマユウ群生地夏になると白い花が一面に咲き、海岸をさわやかに飾る。暖地を好むため北部九州では珍しく、この地が北限ともいわれている。市の天然記念物に指定。
●万葉の碑万葉集に詠まれている歌の碑が7基点在している。8世紀に新羅に向かう大和朝廷の使節が島に立ち寄り、詠んだものと伝えられる。
●鬼塚古墳群古墳時代後期に特徴的な横穴式石室で、1号基から4号基まである。金環玉類や須恵器などが発掘されており、大陸の影響を示す貴重な遺物も多い。
◆案内唐津観光協会 問い合わせは0955・74・3355。
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