甘い香り、伝統の油 大(おお)島(東京都)2007年03月30日 超高速ジェット船は、春の季節風がもたらす大しけの海を滑走していく。やがて外洋に出ると、うねりのかなたに島影が見えてきた。火の神がつくった荒々しい島が近付いてくる。
◇ 島民が「御神火様」と呼ぶ三原山のすそ野には、椿の原生林が広がっていた。身をくねらせながら幹や枝を伸ばす木に、濃い緑の葉が日を受けて光っている。その葉陰に燃えるような赤い花。木漏れ日が遊ぶ地面には散り落ちた花が敷きつめられ、幽玄な侘(わ)びの風情を醸し出していた。 「自生の椿は、ほとんどがヤブツバキ。300万本はあるでしょうか」 島の「椿資料館」で聞いた。その昔、黒潮に乗って流れ着いた実が島に根付いた。東南アジアが原産地で、日本はその北限自生地。この島の火山性の土壌が生育に適していた。 花は10月から翌年3月まで咲き続ける。秋になると実がはじけ、空からつぶてが降るように、種がバラバラと落ちてくる。島の人たちはそれを拾い集め、島の油屋さんに持っていく。種からは良質の油が採れる。 ◇ 「昔は、買い上げたり、油と交換したりした」 高田製油所の高田八郎さん(83)が言う。油屋の2代目で、いまは孫の義土(よしと)さん(31)が4代目として家業を継いでいる。 天日干しした実を細かく砕き、せいろに入れて蒸す。それを網袋に入れ、年代物の石臼の圧搾機にかけ、約1時間ゆっくりと油をしぼる。1トンの実から200リットル強の油が採れる。香ばしく、甘いにおいが充満している。 純度100%の椿油は脂肪酸を多く含み、不乾性で酸化しにくい。肌や女性の黒髪を守ってくれる。料理用に使うと、体によくておいしい。 太平洋に浮かぶ大島は、椿一色の島だった。 (文・イラスト 遠藤ケイ) 見どころ
見どころ東京の南海上約120キロにある伊豆諸島中、最大級の島。黒潮の影響を受け、気候は温暖。初春のツバキをはじめ、春から初夏にかけてはオオシマザクラ、ツツジ、アジサイなど、さまざまな花が咲き、島を美しく彩る。
●伊豆大島火山博物館三原山噴火当時の映像や世界の火山の写真・実物資料などを公開。CG映像で三原山内部の様子を疑似体験する「マグマツアーズ」も。
●椿(つばき)園園芸品種約450種3700本、自生のヤブツバキ約5000本を有する。隣接する椿資料館では、品種の解説パネルや島内の名所、葉の化石などを展示。
●高田製油所昔ながらの方法で、ツバキ油の製造をしている。製品の発送も可(TEL04992・2・1125)。
●元町浜の湯86年の三原山噴火後にわき出した温泉。海に沈む夕日を眺めながら露天ぶろに入れる。水着着用、混浴。
●地層切断面道路脇に現れた地層の断面。波立つような地層のうねり模様が、高さ約30メートル、長さ約600メートルも続いている。
◆案内大島町観光課 問い合わせは04992・2・1446 大島観光協会 問い合わせは04992・2・2177
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