角と角、白熱の勝負 隠岐(おき)・島後(どうご)(島根県)2007年05月11日 「この牛はまだ3歳で、体重は740キロ。まだ大きくなるけんの」
飼い主の藤野博さん(54)が、体にブラシをかけながら言った。旧西郷町(現隠岐の島町)から、山側の東郷集落に入って出くわした、巨大な岩の塊のような牛。全身を覆う黒毛が、つやつやと光っていた。頭の毛はパーマをかけたようにカールしていて、そこから太い角が威嚇するように前に突き出している。首が太い。伝統の島名物「牛突き」の猛者だった。 ◇ 藤野さんは中学生のころから牛を飼っている牛突き好きで、優勝牛を育てた経験もある。 「下牛いうて、大会に出す前の若い牛を育てるのが面白い」 オスの1歳から飼い、餌をやり、運動をさせ、角の先端に穴を開け、針金を通して内側に曲げ、相手の顔面に当たるように矯正する。練習試合をさせながら根性をたたき込む。もち米やマムシを食わせる人もいるという。 7、8歳になると「けんか慣れ」して眼光が鋭くなり、体重は1トンを超える。このころが一番強い。 ◇ 本場所の勝負は白熱する。1トン級の巨体が激しくぶつかり合い、やり先のように研ぎ出された角で突き刺そうとする。相手の角を内側にねじる「ねじり」、首筋や足の付け根、わき腹を突き上げる「あげ」、突きをはずして反撃する「あげもどし」、かつぎ技の「いない込み」などの技がある。時には巨体が投げ飛ばされ、顔や腹に穴が開くこともあるという。 「牛突きは隠岐の男の道楽。勝った負けたといっては、家が割れると思うほどに酒を飲んで騒ぐ」 島の男たちの目が、牛に負けず、ギラギラと輝いていた。 (文・イラスト 遠藤ケイ) 見どころ
見どころ島根半島の北東約80キロにある。隠岐(おき)諸島中、最大の島。同諸島は中ノ島、西ノ島、知夫里島からなる「島前(どうぜん)」と、単独の「島後(どうご)」に分かれる。島の約80%は森林に覆われ、同諸島全域が大山隠岐国立公園に指定されている。
●牛突き日本で最も古く、約780年の伝統がある。初場所、春場所、夏場所、秋場所のほか、5〜10月の毎週(土)、観光客向けに隠岐モーモードームで行われる。
●岩倉の乳房杉高さ約40メートル、根元の太さ約16メートル、樹齢約800年。巨大な根がいくつも乳房のようにぶら下がっている奇怪な形は一見の価値あり。県の天然記念物。
●隠岐古典相撲同じ力士が2度取り組み、先に勝った方が2度目の勝ちを譲る「人情相撲」など、多くの特徴を持つ。慶事の際などに不定期に開催。今年は隠岐水産高校で創立100周年を記念し、9月15日(土)正午から翌朝まで夜を徹して行われる。
●隠岐の島ウルトラマラソン6月17日(日)に開催。100キロと50キロの2コース。コースの途中や後夜祭では地元特産品の振る舞いも。800人。5月21日までに申し込み(先着)。問い合わせは事務局(08512・2・8575)。
◆案内隠岐の島町役場 問い合わせは08512・2・2111
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