悪霊退散! 仮面ほえる 硫黄(いおう)島(鹿児島県)2007年09月14日 絶海の孤島は、低い雲に姿を隠していた。その雲に混じって硫黄の強いにおいが鼻を突く。さらに船が島の南に回り込むと、地獄谷のような噴煙。港は血の池のように赤く濁っていた。
◇ この火山島に、メン(メンドン)と呼ばれる奇っ怪な仮面神がいる。南洋の島から沖縄を経て、海を渡ってきた来訪神だ。この神に逢(あ)いたい。 島で最初に出迎えてくれたのはクジャクだった。茂みや人家の陰から現れる。人を恐れることなく、極彩色の羽根を揺らして優雅に歩いている。 「昔、観賞用に飼っていたのが野生化した。400羽以上おる。島の人口より何倍も多い」 安永和正さん(23)が、半ばあきらめ顔で笑う。メンのことを聞いてみた。メンは、旧暦8月の「八朔(はっさく)踊り」に現れることになっているが、いまは時期がずれている。 ◇ 「メンは熊野神社にいますよ」 思いがけない返事が返ってきた。仮面や装束を保管してあるらしい。頼んで案内してもらった。境内の納屋の戸を開けたら、カビ臭い空気の中で赤と黒の渦巻き模様の大きな顔が一斉ににらんでいた。トカラ列島・悪石島のボゼや、南洋パプアニューギニアのトゥブアンなどの仮面神と似ている。竹島や黒島にもいる。 年に一度、祭りの日に現れるメンは、手に柴(しば)を持って暴れまわり、島から悪霊をはらう。かつては14歳の男子がメンに扮し、元服の成人儀礼を兼ねていた。 和正さんが、カヤで編んだミノをまとう。体がひと回り大きくなった。仮面を被ると、そこに神が立ち現れた。和正さんは、仮面という異空間に入って、くぐもった声で猛々(たけだけ)しくほえた。子らはその日、島の男になる。 (文・イラスト 遠藤ケイ) 見どころ
見どころ九州、薩摩半島の南端・長崎鼻から南西へ約40キロ。竹島、黒島とともに三島村をつくる。活火山の硫黄岳が年中、噴煙を上げており、多くの温泉が点在する。硫黄と温泉が海に流れ出し、周囲の海が赤色や黄緑色に染まる。島の東方にある昭和硫黄島は、1934(昭和9)年に海底火山の噴火で誕生した小島。
●東温泉間近に波が打ち寄せる海岸の岩場にわき出た、野趣あふれる露天風呂。秘湯ファンに人気がある。皮膚病に効果があるといわれている。
●みしまジャンベスクールアフリカの伝統打楽器「ジャンベ」を学ぶアジア初の学校。演奏体験もできる。94年に世界的奏者、ママディ・ケイタさんが来島したのをきっかけに、ジャンベによる島おこしが行われている。毎年8月にはママディさんが来島するほか、アジア各国から生徒が集まるなど、ジャンベを通じた国際交流が盛ん。問い合わせは09913・2・5001。
●恋人岬公園島の南西部、永良部崎にある。周囲はツバキやシャリンバイの自生地。晴れると正面に屋久島や口永良部島、種子島を望むことができる。
◆案内三島村役場 問い合わせは099・222・3141 村硫黄島出張所 問い合わせは09913・2・2101
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