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◇ 鈍くとどろく山鳴りと、地の底からしみだすような煮えたぎる音。小さな温泉が地面の裂け目からいくつもわき出し、その場で沸騰している。静かな水面が泡立ち始め、見る見る熱湯がたぎる様は、まさに「地獄」の名にふさわしい。 登別の地獄谷は、約1万年前の噴火でできた。江戸期の紀行文に「湯元の音は百千の雷の如く」とある。往時の音の記憶は、「大砲地獄」「鉄砲地獄」といった大小の泉源の名にも刻まれている。 「昔に比べればおとなしくなった」と語るのは温泉街で生まれ育った玉川英三郎さん(84)。土産店を営んできたが、引退し、付近を散歩するのが日課だ。「子どもの頃はしょっちゅうここで遊んだ」。ガキ大将たちと崖(がけ)をよじ登り、一番奥に咲く花の実を採りに行く。ゴーゴーボコボコと鳴り響く音は子ども心を圧倒した、と振り返る。 ◇ 近年、地獄谷の活動はやや沈静化しているようだ。だが、間欠泉が突然出現しては収まり、何年かたつと別のところで噴気が起こる。「奥の日和山に行ってごらんなさい」。玉川さんに教えられ、地獄谷から足を延ばしてみた。 山頂付近の岩の裂け目から高圧の蒸気が一気に噴き出し、ジェット機のような音が周囲にとどろく。沼は沸騰している。地下の脈動を、肌で感じた。 (09/29)
観光案内
◆地獄谷登別温泉街から徒歩5分ほど、同温泉最大の泉源地。谷周囲の遊歩道(1周約10分)や展望台から、地獄と呼ばれる湯のわき出し口や噴気孔が見られる。今夏始まった夜間特別公開は、遊歩道(一部区間)にフットライトを設けた「鬼火の路」を歩く。11月30日(木)までの午後7時半〜10時。
◆登別温泉道内屈指の温泉郷。1日1万トンの湯量を誇り、硫黄泉や食塩泉、鉄泉など泉質が多彩なことから、「温泉のデパート」との別称もある。始まりは江戸期とされるこの温泉街、メーンの「極楽通り」には、飲食店や土産店などが軒を連ね、そぞろ歩きも楽しめる。地獄にちなんで、ユニークな鬼のモニュメントも出迎えてくれる。
◆地獄谷から奥へ遊歩道を進むと、煮えたぎる湯釜のように見える「奥の湯」がある。ひょうたん型の「大湯沼」から温泉の湯が流れ出す「大湯沼川」は、足湯スポットになっている。約10日間の周期で湯の量が変わる「大正地獄」は、不気味な地鳴り音が聞こえ、青やピンクなど湯の色が変化して見えるという。白煙をあげる活火山「日和山」は、地獄谷から遊歩道を抜け、車道脇を歩いて25分ほどの展望台から。
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