現在位置:asahi.com>トラベル>よくばり湯の旅> 記事
豊かな彩り、蒸気で染めて 松川温泉(岩手県)2007年10月26日 一瞬、色が揺らいで見えた。紫からオレンジ色へと細やかに変わる階調、絵の具を流し込んだような独特のにじみ。地熱蒸気を利用した天然の染め物が、八幡平の森の中にあった。
温泉卵や温泉まんじゅう。蒸気でゆでたり蒸したりする名物は多く、野菜づくりや花栽培にも使われる。熱で生地に染料を定着させる染色手段も、よく聞く話だ。 でも、近くの松川温泉と同じ成分を使った染色は、ちょっと違った。「山一つ向こうの蒸気では染まらない」と、地元の染色作家、高橋一行さん(34)。蒸気の水分が多すぎず、硫黄成分が濃すぎず、絶妙なバランスなのだという。生きている地球を実感。 布を糸で縛り、染料に漬ける手仕事の「絞り染め」。それを、地中から噴き上げる100度を超す蒸気で蒸す。熱の定着作用に加えて、脱色効果を持つ硫黄成分が独自の濃淡と色ムラをつくる。「色の揺らぎ」は、自然がもたらす造形美だ。ハンカチやスカーフ、洋服などの布製品に形を変え、世界で一つだけの天然染色品として売られていた。 東八幡平から松川温泉までの渓谷沿いは、紅葉の名所に挙げられる。見ごろを迎えた、ヤマツツジやカエデ、ブナの赤や黄色が、鮮やかに映え渡る。山奥の自然が織りなす四季折々の色の変化が、地熱蒸気染めの手本なのかもしれない。 松川の瀬音が聞こえる宿の露天風呂に入った。硫黄臭が漂う。地の恵みが、青みがかった白濁の湯に姿を変えてあふれていた。じっくりと肌から吸い込んだ。 (ライター・石坂亜子 撮影・小松ひとみ) ◇ ●松川温泉 松楓荘、松川荘、峡雲荘、アルペンローゼの4軒。3軒の旅館には源泉があり、1軒は引湯。 ●工房夢蒸染 地熱蒸気染めの制作を手掛ける。販売はペンション「アルペンローゼ」で。染色体験は10人以上で要予約(応相談)。3675円(ハンカチとバンダナを染める)▼ファッションショー 12月1日(土)、午前11時、午後1時半、4時。東京・六本木のテレビ朝日1階多目的スペース「umu」で、岩手の染・織業4社が協力して開催。できれば予約を。2日(日)、午前11時〜午後7時には展示会も。問い合わせは0195・78・2451。 ●松川地熱発電所 国内初の地熱発電所。市全体の電力量を賄い、タービンを回すのと同じ蒸気を地熱蒸気染めに使う。各宿の暖房にも利用。見学施設あり。無料。11月5日〜4月末休業。 【問い合わせ】八幡平市観光協会(0195・78・3500)。 ◇ (2007年10月23日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください) よくばり湯の旅 バックナンバー
|