現在位置:asahi.com>トラベル>よくばり湯の旅> 記事
馬で来て足駄で帰る 後生掛温泉(秋田県)2007年11月16日 高い天井。丸太の柱。立ち込める湯気。後生掛(ごしょうがけ)温泉の大風呂は湯治場の雰囲気にあふれている。
「箱蒸し風呂」に入ってみた。1人用のサウナと思えばいい。木箱に入ってイスに腰掛け、観音開きの扉を閉める。顔は箱の外に出ているが、中は湯気がもうもう。たちまち汗が噴き出す。 もう一つの名物が「泥湯」。灰黒色の、ほの温かい湯だ。底にたまった泥を体に塗りたくり、薄暗い浴槽の隅に潜む。老いた獣が傷を癒やしている気分になる。低く唸(うな)ってみたりして。 東北地方は湯治場の宝庫だ。後生掛温泉は、近くの玉川温泉と並んで代表格といえよう。昔からのキャッチフレーズが「馬で来て足駄(あしだ)で帰る後生掛」。そのぐらい効く、ということらしい。 湯治棟は「オンドル」になっている。床下を蒸気が通り、ポカポカ温かい。これからの季節、雪景色の中のオンドルは極楽だろう。 大部屋に泊まった。同室の湯治のベテランたちと話が弾む。 仲良し3人組で北海道から来ている伊端シゲさんは79歳。いまも市民マラソンを走るご主人のことを、結局はノロケられた。 三陸・田老海岸(岩手県)の千葉福司さんは座骨神経痛を治しに。食堂で知り合った女性から、なぜか離婚の相談を持ちかけられている。確かに、海で鍛えた相談しがいのある風貌(ふうぼう)だ。 こんな湯治場で1週間も過ごせば、人生というものがもう少し深いところで分かる気がする。(ライター 宮本貢) ◇ ●後生掛温泉 地熱作用で、気温が氷点下まで下がる真冬でも湯治棟室内は20度以上に保たれる。大部屋1人1890円、個室もあり。(いずれもトイレ共同、素泊まり)。朝食735円、夕食1890円で用意も可(要予約)。自炊可(光熱費1泊あたり210円)。日帰りの場合は、[前]7時〜[後]7時(毎週[水]の[前]9時半〜10時半を除く、受け付けは30分前まで)。400円。旅館棟もあり。無休△「湯治村村民」制度 1年に2回以上利用する人にお得。1度に5泊以上利用すると宿泊料金が1割引きになるほか、毎年6月に5泊分の無料湯治券があたる抽選会も。16年前に始まり、07年11月現在、村民は2177人。村民を5年続けると表彰状と記念品が贈られる。年会費1500円。電話湯治部事務所(0186・31・2222)。 ※11月上旬から翌年4月下旬まで、八幡平アスピーテラインと国道341号線で通行規制あり。詳細は問い合わせを。 ◇ (2007年11月13日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください) よくばり湯の旅 バックナンバー
|