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果てなく続く山々に囲まれて 十津川温泉郷(奈良県)2008年03月21日 駅を出発したバスは、しばらく市街地を走る。うとうとしていると、いつのまにか山の中にいた。川沿いを、細く曲がりくねった道が続く。何度も停車して対向車をやり過ごす。窓の外は、青々とした山と渓流。十津川村の面積は約670平方キロで、奈良県の5分の1を占めるが、その96%は山林だ。
バスに揺られて4時間半、停留所「十津川温泉」で降りた。途中で休憩が2回あったが、さすがに少し、足がだるい。 さらに西へ5キロほど進み、上湯温泉「神湯荘」の川露天へ向かう。屋根と壁に囲まれた女性用もあるが、バスタオルを巻けば男性用にも入れる。「このロケーション、やべぇよ」と、大阪から来たという若者たちのはしゃいだ声。熊野古道の峠の名前にもある通り、まさに「果無(はてなし)」の山並みが迫ってくる。せせらぎに耳を傾け、手足を伸ばすと、長旅の疲れも日頃のストレスも、それどころか体も湯に溶け出していくような気分だ。 湯はぬるり、とろりとして、くず湯のよう。湯の花も見える。おかみの深瀬かおりさんいわく「美肌になりますよ」とのこと。飲泉すると、アトピーや糖尿病にも効果があるらしい。 夕食では、地元産のアユやアマゴ、キノコの天ぷら、鹿肉のユッケなど山の幸に大興奮。温泉で炊いた薄黄色のご飯をかき込む。体の内外から浄化され、健やかになってゆくよう。 ふと部屋のヒノキ風呂をのぞくと、湯船から湯があふれ続けている。水道代が! と条件反射で蛇口を探してしまう。「源泉かけ流し」とは、こういうことか……。 日本一長いという路線バスでたどり着いた、日本一広い村の温泉は、日本一ぜいたく、なのかもしれない。 (ライター・根岸華奈子 撮影・塚原紘) ●十津川温泉郷 湯泉地(とうせんじ)、十津川、上湯と、泉質の異なる三つの温泉がわく。04年、村はすべての温泉施設での「源泉かけ流し」を宣言した。地元産の食材を使った料理、世界遺産の熊野古道のウオーキングなどを打ち出し、「心身再生の郷(さと)」づくりに取り組んでいる。問い合わせは村づくり推進課(0746・62・0004)。 ●神湯荘 川露天(宿泊者専用)のほか、貸し切り風呂など10種類の風呂がある。十津川温泉から送迎あり(要予約)。1泊2食1万3350円〜、夕食休憩6600円〜。問い合わせは0746・64・0256。 ●ゆべし 古くから十津川に伝わる保存食。ユズをくりぬき、そば粉、シイタケ、ごま、みそなどを詰めて蒸し、2カ月ほど風にさらして乾燥させる。1個630円。道の駅「十津川郷」などで販売している。問い合わせは十津川深瀬(0746・66・0031)。 ◇ (2008年3月18日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください) よくばり湯の旅 バックナンバー
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