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「坊っちゃん」も入ったぞなもし 道後温泉(愛媛県)

2008年4月11日

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写真旅館の泊まり客や入浴客で賑わう道後温泉本館写真霊の湯の男性用浴槽=いずれも松山市、渡辺瑞男撮影地図【所在地】松山市道後湯之町【交通】松山空港からバスで約50分。JR松山駅、伊予鉄道松山市駅から路面電車で約25分。【泉質】単純温泉

 ごとんと云って飛行機がとまると、ハイカラ頭の客室マドンナがおれに向かって言った。「松山空港に着いたぞなもし」

 もちろんそんなわけはないが、気分はすでに夏目漱石の「坊っちゃん」。目指すは道後温泉。空港内のポスターが「ようおいでたなもし」と歓迎してくれる。

 もっともこの「なもし」言葉、近年ほとんど使われないそうだ。ちょっとさびしいぞなもし。

 坊っちゃん列車で道後へ。

 「道後温泉本館」がすごい。木造の三層楼は国の重要文化財。明治二七(1894)年、城大工の手で建てられたという。翌年、松山中学の教師として漱石が赴任してきた。

 小説の中の「坊っちゃん」は、温泉本館の「上等」を好んだ。「おれはいつでも上等へ這入った」と威張っている。そういうことならと1500円を奮発して、その「上等=霊の湯三階個室」へ。障子には雪見窓。床の間に書が飾ってある。

 湯から上がると、お茶と坊っちゃん団子が運ばれた。外は湯の町のざわめき。春の風。浴衣で畳に大の字になって、う〜ん、この部屋に住んでしまいたい。

 「坊っちゃん」は松山と松山人についてボロクソだ。でも松山の人は「坊っちゃん」と漱石が大好き。「あれだけポンポン言われたら逆に気持ちがええですもの」と初老のタクシー運転手さんが笑う。それに漱石さんは松山の誇り・正岡子規の友だちでしたから、と。

 この町では、明治という時代がとても近く感じられる。

(ライター・宮本貢)

 ●道後温泉 3千年の歴史があるとされ、日本最古の温泉とも言われる。稼働する17の源泉を市が管理し、外湯や各旅館に配湯している。

 ●道後温泉本館 広々とした「神の湯」、こぢんまりとした「霊の湯」の二つの浴室、個室を含む三つの休憩所がある公衆浴場。400円〜1500円。入浴後、浴衣に着替えお茶とお菓子を味わいながら休憩できるコースも。午前6時、一番風呂を知らせる太鼓が打ち鳴らされる。午前6時〜午後10時(一部11時まで)。問い合わせは事務所(089・921・5141)

 ●坊っちゃん列車 1888(明治21)〜1954(昭和29)年に市内を走っていた蒸気機関車を復元した路面電車。市中心部と道後温泉間を結ぶ。300円、小学生200円。問い合わせは伊予鉄道(089・948・3323)。

 ●「なもし」 愛媛の方言で、「な+申す」が転化した敬語表現。「ございます」の意。

     ◇

(2008年4月8日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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