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「一日修行者」の疲れ癒やす 三朝温泉(鳥取県)

2008年5月16日

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写真投入堂(左)の拝観後も厳しい道のり写真三徳川のせせらぎが聞こえる河原風呂=三朝町、塚原紘撮影図【所在地】三朝町【交通】鳥取空港からバスで約1時間。JR山陰線の倉吉駅からバスで約20分。【泉質】放射能泉

 鳥取県中部の三徳山(みとくさん)に「奇跡の建築」があると聞き、胸が高鳴った。その名も国宝「投入(なげいれ)堂」。ふもとで造ったお堂を法力で洞穴に投げ入れた、との伝説もあるが、真相は謎のまま。たどり着く手段はただ一つ。手つかずの自然が待ち受ける「修行の道」を行くよりほかない。

 三徳山は修験道の行場として栄えた。入山時は服装を厳しくチェックされ、革靴やサンダルは滑りにくいわらじに履き替えねばならない。輪袈裟(わげさ)を肩からかければ出発だ。

 中腹にあるお堂までは約700メートル、標高差は200メートル。「かずら坂」「クサリ坂」「馬の背」「牛の背」と呼ばれる難所が待つ。木の根にしがみつき、切り立つ岩をはい上がり、息を切らして無心によじ登る。まさに「修行」である。

 入山から1時間。巨岩を回ったところで、神秘的な光景が目に飛び込んだ。洞穴にぴたりと張り付き、山と一体化したお堂の存在感は圧巻だ。

 建立は平安時代後期。急斜面の岩に垂直に下りた細い柱が、お堂を支える。北向きの洞穴にあるため、直射日光や雨風から守られてきた。千年を超える月日を耐えたその姿を目に焼き付けようと、しばしたたずんだ。

 疲れた登山客を迎えるのは、三徳山の参拝を終えた源義朝の家来が発見したという三朝(みささ)温泉。世界有数のラジウム含有量を誇る。熱めの湯につかると、「一日修行者」の張りつめていた気持ちがほぐれていった。

(文・蒔苗沙都子)

     ◇

 ●三朝温泉 27の旅館やホテルが点在。800年以上の歴史を誇り、野口雨情や志賀直哉らの文豪も訪れた。源泉の「株湯」や公衆浴場、各宿泊施設の温泉が開放され、「湯めぐり」が楽しめる(有料、時間は要問い合わせ)。問い合わせは三朝温泉観光協会(0858・43・0431)。

 ●三徳山 三仏寺 天台宗の寺。06年に開山1300年を迎え、世界遺産登録を目指している。「宝物殿」では、「投入堂」に安置されていた重文の仏像などが鑑賞可。山内の宿坊では、三徳山の水で作った「三徳豆腐」や名物「とち餅」が付いた精進料理も(3日前までに要予約)。問い合わせは三仏寺(0858・43・2666)。

 ●三徳川 温泉街の中心を流れ、清流にしかいないカジカガエルも生息。6月〜9月にかけて聞こえる鳴き声は「日本の音風景100選」にも選ばれた。6月にはゲンジボタルが舞う姿も楽しめる。

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(2008年5月13日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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