新緑に囲まれた境内で披露される檜枝岐歌舞伎
【所在地】檜枝岐村【交通】会津高原尾瀬口駅からバスで約1時間10分。東北道西那須野塩原インターから約2時間。【泉質】単純温泉、硫黄泉
遠い土地を訪ねたとき、それだけで感激することがある。
鬼怒川、川治、湯西川など、社員旅行や町内会のバス旅行で来たことのある温泉地の、そのまた奥に檜枝岐(ひのえまた)温泉はあった。浅草から電車とバスを乗り継いで4時間余りの山の中、はるばる来たものである。
さらに十数キロ分け入るなら、夏が来れば思い出す、あの、はるかな尾瀬なのである。 檜枝岐村は、73年に温泉を掘り当てるまではまったくの寒村だった。いまも世帯数205、人口625。雪深い土地だが、ここには檜枝岐歌舞伎なるものが伝わっている。
江戸の昔、お伊勢参りに行った村人が、旅の途中で江戸の歌舞伎を見覚えて、帰ってから村人たちに演じて見せたのが起源らしい。山奥の村なればこそ唯一の娯楽として生き永らえたのである。毎年、5月12日、8月18日、9月の第1土曜の3回、鎮守神の境内で公演がある。
5月の舞台、「義経千本桜 鳥居前の場」で狐(きつね)忠信を演じた星勇人さん(36)は村役場の職員で、子役として登場した兄弟は勇人さんの子どもである。祖父と母親もかかわっている。村をあげての大イベントなのだ。
舞台は素朴な味があって楽しかった。しかし、寒かった。標高約950メートル。5月というのに、周辺の桜がまだ咲き残っている。幕が引かれると早々に宿に引き揚げ、無色無臭の温泉につかり、冷え切った体を温めつつ、みんなで村芝居の感想を述べ合ったのだった。
(文・池辺史生)
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●檜枝岐温泉 周囲を2000メートル級の山々に囲まれた尾瀬の玄関口。湯脈探査機を積んだヘリコプターを飛ばして温泉を掘り当てた。全戸に源泉が引かれ、どの家でも民宿を開けるようにした。現在は旅館5軒、民宿35軒ほど。三つの日帰り温泉もある。
●尾瀬国立公園 日本最大の山岳湿地である尾瀬ケ原、尾瀬沼、日本百名山の燧ケ岳、会津駒ケ岳などを抱え、総面積は約3万7千ヘクタール。ミズバショウは6月初旬まで見ごろで、7月中旬にはニッコウキスゲなどの高山植物が楽しめる。地元ガイドと尾瀬を歩くイベントも予定。
●裁ちそば つなぎを使わない純正そば。3ミリほどの厚さにのばし、何枚も重ねて布を裁つように切ることから名づけられた。毎年11月の第2土曜、そばや山菜などが食べ放題の「新そば祭り」も。
問い合わせは尾瀬檜枝岐温泉観光協会(0241・75・2432)。
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(2008年5月27日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)