越前町沖で釣り上げたスルメイカを手に、笑顔がこぼれる桐山さん
【所在地】越前町【交通】東海道新幹線米原駅から特急で北陸線武生駅まで約50分、そこから車で約40分。【泉質】単純温泉、炭酸水素塩泉
露天風呂から日本海に目をやると、遠くに漁(いさ)り火がにじんでいた。雨はやみそうにない。初めてのイカ釣り体験。湯けむりにため息が混じる。
夜9時。常連客ら10人を乗せた小型船「豊甚丸」が越前町・ここのぎ港を出た。30分後に停泊し、横一列につるしたランプに漁り火がたかれる。野球場のライトのようにまぶしい。今が旬のスルメイカやケンサキイカがいっぱい集まりそうだ。
「今日は水深45メートルあたり」。名古屋から来た桐山満さん(59)が勘で潮流を読み、イカの居場所を探る。鈴木みちるさん(50)はさおを貸してくれた。さて、「餌いらず」の仕掛けを海に落として待つとするか。
しばらくして雨が横殴りに変わった。立っているのもつらい。揺れる度に、胃の底から突き上げてくるものがある。カモメや波頭に跳ねるトビウオを数えてしのぐが、同じ船でも穏やかに揺れる「湯船」が恋しい。
常連客が次々と釣り上げるのを横目に、リールの先をぼんやり。出航から5時間半。「もうだめか」。座り込んだ直後、リールがこくんとうなずいた。
赤いスルメイカだった。「赤は興奮している証拠」と船長の川上豊樹さん(39)。隣で釣り上げられた白いイカに、「中には鈍感なやつもいる」と船乗りらしく笑い飛ばした。
翌朝4時、雨はやんだ。「スルメはやっぱり塩辛かイカソーメンでしょ」。船室はイカ談議に花が咲く。桐山さんは30杯釣った。私はたった1杯。しかし、7時間の乗船を酔わずに終えた満足感で心は「いっぱい!」だった。(文 甲田朋子)
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●越前温泉 越前海岸沿いに源泉が三つあり、宿泊施設31軒、立ち寄り湯4カ所が点在する。問い合わせは越前町観光協会(0778・37・1234)。
●豊甚丸 9月末まで、同町の旅館、民宿の宿泊者を対象に「イカ釣り体験プラン」を実施。1室2人利用で、1泊朝食付き1人1万2000円(別途イカ釣り針代2000円)。午後6時半から約3時間乗船。雨具持参。電話かホームページで要予約(0778・37・6818、http://www.houjinmaru.com)。9月以降はアジやマダイ、ブリ漁体験など。
●露天風呂「漁火」 日帰り公衆浴場。午前11時〜午後10時((土)(日)(祝)は午前10時から)。(火)((祝)の場合は翌日)休み。500円、小学生300円、3歳以上200円。問い合わせは(0778・37・2360)。
●越前がにミュージアム 越前ガニの生態がわかる展示や海中シアターなど。午前9時〜午後5時。(火)((祝)の場合は翌日)休み。600円、3歳〜小学生300円。問い合わせは(0778・37・2626)。
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(2008年6月17日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)