飛び回るゲンジボタルの光跡(30秒間露光)
【所在地】米沢市小野川町【交通】山形新幹線米沢駅からバスで約25分。東北道福島飯坂インターから車で約1時間。【泉質】硫黄泉
ゲンジボタルがふわりと柔らかく光波を描いて夜空に舞う。その先に満天の星がきらめく。
「光はことば。ホタルは光で愛を語るんです」。米沢ホタル愛護会の蔦(つた)幹夫会長(55)から耳にした言葉が、艶(つや)やかに甦る。
ホタルの里として知られる小野川温泉は、山形県米沢市の郊外、大樽川沿いの静かな山の中にある。なんでも1200年前、小野小町が旅の途中で病に倒れてその湯につかると、父親も見まごう絶世の美女になったとか。ならば私も「美人の湯」にあやかりたい、ホタルとも戯れたい、と心が躍る。
午後8時、闇を待ち構えていたようにホタルの点滅ショーは始まった。田んぼの用水路から発生し、次第に数が増えて四方へ飛び交う。羽化して命が尽きるまでの1週間から10日が、交尾のチャンスという。
闇と静寂の中で演じられる光のラブコールは、儚(はかな)く美しい。生きた証しに麗しいメスと出会い、同調発光して果てたいというオスの愛が、心に染みてきた。
1時間後。体内時計があるかのように光がやみ、「自然のイルミネーション」は終わった。
露天風呂につかりながら見る一番星は、ひときわ美しい。あっ、流れ星だ。「小野小町のように……」と慌てて願った。
降るような星はやがて、天空のホタルのように見えてきた。「あれがゲンジ、あれはヒメボタル……」。勝手にイメージを膨らませていると、一瞬ホタルが光ったような気がした。夢か、うつつか。ロマンチックな、いで湯のひとときを堪能した。
(写真家・ジャーナリスト 外山ひとみ)
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●小野川温泉 旅館15軒と2カ所の共同浴場がある。無料の足湯や飲泉所も。環境庁(当時)が「ふるさといきものの里」に指定、ホタルが生息する。羽化は6月中旬〜7月末、空中を浮遊するのは午後7時50分〜9時ごろ。
●ホタル公園 露天風呂「小町の湯」 午前6時〜午後6時(冬季は7時〜5時)。200円、小学生100円。(火)休み。
●夢ぐりプラン コマの形をした「夢ぐり手形」を購入すると、加入17施設から3カ所選び入浴出来る。1000円。使用後の手形は絵付けをして持ち帰り可。宿泊者対象。
◎田んぼアート山形米や古代米の苗を使って水田に絵を描く。来年のNHK大河ドラマにちなみ、今年の絵柄は米沢藩・上杉家の重臣、直江兼続。10月5日(日)に刈り取り予定。
【問い合わせ】米沢市観光課(0238・22・5111)。
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(2008年7月15日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)