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雲の上、紅葉に浸る 十勝岳温泉(北海道)

2008年10月24日10時22分

写真:山肌に描かれる天然の色彩は、入浴客を飽きさせない=野口隆史撮影山肌に描かれる天然の色彩は、入浴客を飽きさせない=野口隆史撮影

写真:ポツンと離れた2本の木が丘に映える=野口隆史撮影ポツンと離れた2本の木が丘に映える=野口隆史撮影

地図:【所在地】上富良野町十勝岳温泉【交通】旭川空港からバスで約35分。旭川駅から上富良野駅までJR富良野線で約1時間、上富良野駅からバスで約45分。【泉質】硫酸塩泉【所在地】上富良野町十勝岳温泉【交通】旭川空港からバスで約35分。旭川駅から上富良野駅までJR富良野線で約1時間、上富良野駅からバスで約45分。【泉質】硫酸塩泉

 旭川で生まれた優佳良織(ゆうからおり)に、晩秋の色彩が結晶した作品がある。繊細な手仕事が、凛(りん)とした空気まで織り込んでいく。

 短く、切ない。そんな北の秋を、十勝岳温泉に訪ねた。

 北海道の「屋根」大雪山系十勝岳(2077メートル)。温泉郷は雲の上にあった。登山道が一筋、霧の中へと伸びる。

 「増えるっしょう、年配の入山者。冬の山はいいもねえ。先代と同じに、山歩きの安全見守らねば」と、湯元凌雲閣(りょううんかく)の2代目、会田義寛さん(76)。

 1857(安政4)年の噴火によりできた安政火口まで、40分かけて歩く。

 ハイマツの小径(こみち)から溶岩流跡へ。ナキウサギが「ピチピチ」鳴き交わす。太古からの響きか。ただただ寒い岩場で、これはすてきな贈り物。「熊出没」の看板を見た時の緊張もほどけた。

 いで湯も豊かである。標高1280メートルと、道内屈指の高地にわくのが凌雲閣の湯。

 「赤はナナカマド、黄色はダケカンバ……」。ぬるめの湯に沈み、ぐるり見渡す。十勝岳連峰の紅葉に、湯船ごとすっぽりのみ込まれていた。

 夜更けに、みぞれが地面をたたく。寒風にせかされてか、ぼんやり赤く霞(かす)んでいた木立も、朝には緋色(ひいろ)に染まっていた。

 冬の足音は、ふもとの美瑛の丘にもひたひたと。

 畑では小豆が片づき、あとはビート(甜菜(てんさい))の収穫を待つばかり。秋まき小麦の若い緑も、ほどなく雪に包まれるだろう。

 丘のかなた、薄墨色の空に、十勝岳連峰の稜線(りょうせん)が白くくっきり浮かんでいた。(尾島聡)

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 ◎十勝岳温泉 1960年に十勝岳の地図作成のため測量が行われた際、安政火口の渓谷で温泉がわいているのが見つかった。宿泊施設は吹上地区を含め4カ所。電話かみふらの十勝岳観光協会(0167・45・3150)。

 ◎吹上露天の湯 十勝岳温泉から美瑛方面へ向かう道沿いにある混浴の露天風呂。TVドラマ「北の国から ’95秘密」で、シュウ(宮沢りえ)と五郎(田中邦衛)が入り、一躍有名に。水着着用で入浴無料。無休。

 ◎優佳良織 北海道の四季の自然をモチーフに、旭川の染織家・木内綾、木内和博が創作した手織工芸。多彩な色を重ねる油絵のような表現が特徴。当初は「ユーカラ」と表記されていたが、のちに版画家・棟方志功が「優佳良」と漢字を用い命名した。同市の北海道伝統美術工芸村に優佳良織工芸館(電話:0166・62・8811)がある。

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(2008年10月21日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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