2008年12月19日10時35分
ワイワイと食べるのが田舎そばのだいご味
温泉はやや白く、肌にトロリとからみつくような感触だ(大蔵村の丸屋旅館)=板元義和撮影
【所在地】大蔵村【交通】山形新幹線新庄駅からバスで約1時間。東北中央道東根インターから車で約1時間半。【泉質】塩化物泉、炭酸水素塩泉、二酸化炭素泉
山形新幹線を村山駅で下車すると、出羽三山から吹き下ろす冷たい風のせいか、思わず身震いした。11月、最上川流域では本格的な新そばの季節を迎えた。これから雪深くなる時期にかけ、うまいそばが堪能できる。
杉でできた大きなお盆のような器で出されるのは「板そば」と呼ばれる。そばの実をすべて挽(ひ)く「挽きぐるみ」なので、色はやや黒っぽい。すするのに苦戦するほどの太さと強いコシ。しっかりとかみ締めて味わう。あまりの歯ごたえに「ふぅ」とため息をつくと、新そばのみずみずしく、鮮烈な香りが鼻から抜けていった。
昔、この地の農家は、自分の畑でそばの実を栽培し、そばを打った。田植えや収穫を手伝ってもらう近所の人や親類には、自慢のそばで労をねぎらった。大正9(1920)年創業の「あらきそば」2代目主人、芦野又三さん(76)は「客人さ来たらそばでもてなす。このあたりでは『そば振る舞い』っていうんです」。人々の団欒(だんらん)の真ん中にいつでもある板そば。大みそかも家族ですすりながら、来年の幸せを祈るのだろう。
素朴なそばの余韻にひたりながら、村山市の隣、大蔵村にある肘折(ひじおり)温泉郷まで足を伸ばす。大正時代にタイムスリップしたようなひなびた趣のある温泉だ。飲泉もあり、効能は「胃腸の働きを活発にする」。クイッと1杯引っかけて、もう一度、そば三昧(ざんまい)といきますか。
(ライター 中津海麻子 撮影 坂元義和)
◇
●肘折温泉郷 開湯1200年といわれる湯治場で、肘折温泉、黄金温泉、石抱温泉の総称。環境省指定の国民保養温泉地。
▼朝市 毎日午前5時半、地元の農家が新鮮な野菜や山菜、手作りの総菜などを肘折温泉街の旅館の軒先で売る。冬季は休み、4月下旬ごろ再開予定。問い合わせは大蔵村(0233・75・2111)。
●肘折いでゆ館 温泉療養相談をメーンに、現代的な湯治の指導が受けられる。入浴料350円、小学生200円。午前9時半〜午後6時(季節によって変動)。第2、4(火)休み。問い合わせは0233・34・6106。
●カルデラ温泉館 黄金温泉にある日帰り温泉施設。炭酸ガスを含む冷泉を持ち、飲泉もできる。入浴料350円、小学生200円。午前9時半〜午後5時(季節によって変動)。第1、3(火)休み。問い合わせは0233・76・2622。
●最上川三難所そば街道 最上川中流にある碁点橋の南北約15キロにわたり、13軒のそば屋が営業する。問い合わせは村山市商工観光課(0237・55・2111)。
◇
(2008年12月16日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)