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向田邦子さんへの手紙、胸に 鹿児島市街地温泉(鹿児島県)

2009年7月3日11時7分

写真:桜島が見渡せる城山観光ホテルの露天温泉桜島が見渡せる城山観光ホテルの露天温泉

写真:「向田邦子居住跡地の碑」の前でガイドをする浦川さん「向田邦子居住跡地の碑」の前でガイドをする浦川さん

地図:【所在地】鹿児島市【交通】JR鹿児島中央駅から市電やバスなどを利用。【泉質】炭酸水素塩泉、塩化物泉、単純温泉など【所在地】鹿児島市【交通】JR鹿児島中央駅から市電やバスなどを利用。【泉質】炭酸水素塩泉、塩化物泉、単純温泉など

 拝啓 向田邦子様

 出会いは中学生の時でした。随筆「字のない葉書」を読んで、子を思う父親の姿に感動しました。折に触れ、小説や脚本も読みました。そして今、あなたが少女時代を過ごした鹿児島を訪ねています――。

 1939〜41年、当時小学生だった向田さんは鹿児島市で暮らした。脚本家になり38年ぶりに帰省すると、町並みは大きく変わり、変わらないのは桜島だけだとエッセーで綴(つづ)っている。

 それから30年。私はボランティアガイドの浦川若朗さん(74)とゆかりの地を歩いた。

 繁華街の天文館を通り、向田さんが通った山下小学校へ。校庭の片隅に当時の校門の柱が残る。門越しに見える子供の姿に、浦川さんは「おかっぱ頭の向田さんが重なるね」と笑った。

 近くに喫茶「メルヘン」がある。継母が向田さんと同級生だったという店主の吉冨祐子さん(65)は、向田さんにコーヒーを淹(い)れた。テレビドラマは迷わず向田作品を見ていたので緊張した。「『おいしかったわよ』って言ってくれて」。その後、向田さんから礼状とシイタケのつくだ煮が届く。こまやかな心遣いに感激し、今も器のふたをとってある。「それからは、人にすぐ礼状を書くようになりました」と吉冨さん。私にも手紙を送ってくれた。

 ――城山の温泉からは、昔と変わらない桜島が一望できます。あなたの心遣いも人の心に残っていました。湯をくぐった手で目元を押さえました。夕暮れ時のせいか、涙があふれてきます。

 敬具

(文・甲田朋子 撮影・比田勝大直)

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●鹿児島市街地温泉 源泉数は約280あり、ホテル、旅館など約80軒の温泉が点在している。飲泉できる施設が多い。問い合わせは市観光振興課(099・216・1327)。

●鹿児島城山温泉 さつま乃湯 城山観光ホテル内の展望露天温泉。日帰り入浴は2400円、小学生1200円、3歳以上600円。1泊2食付き1万9000円から。いずれも入湯税別。問い合わせは099・224・2200。

●向田邦子「故郷もどき」まちなか散策 向田作品に登場するゆかりの地をめぐる。希望する日時に対応可能。高校生以上500円。要予約。問い合わせは鹿児島まち歩き観光ステーション(099・208・4701)。

●向田邦子全集(文藝春秋) 小説、エッセー、対談などを収録。全11巻、別巻2。全巻で爆笑問題の太田光さん、作家の諸田玲子さんが月報を執筆。1890円から。

●向田邦子シナリオ集(岩波現代文庫) 全6巻。1050円から。全集、シナリオ集は生誕80年を記念し毎月刊行中。

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(2009年6月30日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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