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弥生の原風景に眠る王都 湯ノ本温泉(長崎県)

2009年7月10日10時16分

写真:原の辻遺跡の「神域」の入り口に、マキの木の鳥居が立つ原の辻遺跡の「神域」の入り口に、マキの木の鳥居が立つ

写真:壱岐島荘の大浴場=壱岐市壱岐島荘の大浴場=壱岐市

地図:【所在地】壱岐市勝本町【交通】博多港から郷ノ浦港まで高速船で約1時間、そこから車で約20分。空路は長崎空港から壱岐空港まで30分、そこから車で約30分。【泉質】塩化物泉【問い合わせ】壱岐市観光協会(0920・47・3700)【所在地】壱岐市勝本町【交通】博多港から郷ノ浦港まで高速船で約1時間、そこから車で約20分。空路は長崎空港から壱岐空港まで30分、そこから車で約30分。【泉質】塩化物泉【問い合わせ】壱岐市観光協会(0920・47・3700)

 見渡す限り水田がつづく。その向こうに、シイやカシの木々が青々と生い茂っている。壱岐(いき)島の南東部、1キロ四方に広がる原(はる)の辻遺跡は、弥生時代にこの地を治めた「一支国(いきこく)」の王都があったといわれる場所だ。

 「1分間、目をつぶって『弥生人』になってみて下さい」。ボランティアガイドの吉永清さん(59)の言葉に、しばし目を閉じる。平地をゴウゴウと吹き渡る海風の音、ウグイスの澄んだ鳴き声。ふと不思議な感覚に包まれた。私は今、2千年前と同じ風景の中にいる――。

 丘のように小高くなった遺跡の中心部には、土壁とかやぶきの住居、祭殿が復元されている。王の館の中をのぞく。6畳ほどだろうか。意外に狭い。生け垣に囲まれた「神域」にある高床式の祭殿の中は、ひんやりした空気が漂っていた。

 一支国について、魏志倭人伝には「三千ほどの家があり、北(大陸)や南(日本本土)と交易」との記述が残る。「今は日本の果てのような島だけど、当時は中心的な役割を担っていたと思います」と吉永さん。九州と朝鮮半島の間に浮かぶ小島に、大陸からの人やモノがにぎやかに行き交う光景が目に浮かんだ。

 島の西側の海辺に湯ノ本温泉がある。古事記などに登場する神功(じんぐう)皇后が、朝鮮半島出兵の帰途に出産した応神天皇の産湯をつかわせたという伝説も残るほど、歴史は古い。茶色の湯につかり、いにしえの人々に思いをはせる。想像の旅はどこまでも続いていく。

(文・伊東絵美 撮影・比田勝大直)

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●壱岐島 福岡県と対馬の中間に位置する。総面積は138.5平方キロメートル、人口約3万1千人。

●湯ノ本温泉 温泉場として開発されたのは1662年と伝わる。宿泊施設は7軒。

▼壱岐島荘 湯ノ本温泉にある国民宿舎。ひょうたんの形をした湯船がユニーク。食堂から水平線に沈む夕日が一望できる。1泊2食付き6660円、小学生5980円。日帰り入浴も可(ロビー休憩315円〜、小学生210円〜、午前10時〜午後7時)。問い合わせは0920・43・0124。

●原の辻遺跡 約100ヘクタールの多重環濠(かんごう)集落。弥生時代の遺跡では登呂遺跡(静岡)、吉野ケ里遺跡(佐賀)と並んで国特別史跡に指定。復元建築物は、発掘された柱の跡から当時の位置や形を推測して建てられている。交易を裏付ける「船着き場跡」も見つかっている。

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(2009年7月7日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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