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山里に根付く人の絆 湯野上温泉(福島県)

2009年7月31日10時44分

写真:静まり返る大内宿の朝
静まり返る大内宿の朝

写真:清水屋旅館の露天風呂は緑に包まれている=下郷町清水屋旅館の露天風呂は緑に包まれている=下郷町

写真:【所在地】下郷町湯野上【交通】会津若松から会津鉄道会津線で約30分。東北道白河インターから車で約45分。【泉質】単純温泉【所在地】下郷町湯野上【交通】会津若松から会津鉄道会津線で約30分。東北道白河インターから車で約45分。【泉質】単純温泉

 茅葺(かやぶ)き屋根が連なり、囲炉裏の煙がたなびく。タイムスリップしたかのような大内宿の静かな朝。江戸時代、物資輸送や参勤交代のための街道に栄えた宿場である。

 だが1884(明治17)年、近くに国道が開通すると、この山里は開発から取り残され、寂しくなった。それが1981年、重要伝統的建造物群保存地区に選ばれてから蘇(よみがえ)った。観光地にと集落が整備されたのだ。

 その後、江戸時代の風情が人々を魅了。人口約170人の小さな集落にいま、年間100万人もの観光客が訪れる。

 そんな中にあって、今も変わらないのは人々の絆(きずな)だ。辺境の雪深いこの地で受け継がれてきた「結(ゆ)い」という助け合いが、深く根付いている。

 1945年に電気が通るまでは不便で、さらに高冷地のため農作物もあまりとれず、生活は苦しかった。男衆は炭を焼き、女衆はそれを馬に積んで旧会津本郷町まで売りに行き、コメや石油を買ってきたという。

 「『結いっこ』でこないだ小屋の茅を葺いたよ。30人で7日間、にぎやかで、まるで祭りのようだった」。民宿を営む鈴木儀四郎さん(89)の言葉が、その歴史を象徴する。

 湯野上温泉は大内宿から車で15分ほど。この地で初めて温泉宿を開いたという清水屋旅館を訪ねた。なめらかな湯に浸(つ)かっていると、「結い」の響きが南会津の強さと優しさのように染みてきた。歴史を知ると、湯もよくばりになれる。(写真家・ジャーナリスト 外山ひとみ)

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●湯野上温泉 奈良時代、大川渓谷の河原にわくのを発見されたと言われる。25軒の宿泊施設がある。最寄りの会津鉄道湯野上温泉駅は、茅葺き屋根の駅舎で、改札のそばには囲炉裏がある。電話下郷町観光案内所(0241・68・2920)。

●大内宿 江戸時代の宿場町の町並みを残す。現在も5軒で宿泊ができる 

▼大内宿の自然用水 集落の中心に走る道の両側に流れ、生活用水として集落の生活を支え続ける。環境省の「残したい日本の音風景100選」。電話大内宿観光協会(0241・68・3611)。

●塔のへつり 凝灰岩が浸食、風化してできた奇岩怪石が連なる景勝地。がけ沿いに約100メートルの遊歩道がある。紅葉の見頃は10月下旬〜11月上旬。「へつり」とは、急斜面に沿った道の意。国指定の天然記念物。電話塔のへつり観光組合(0241・67・4071)。

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(2009年7月28日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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