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吉田松陰の情熱に触れる 蓮台寺温泉(静岡県)

2009年9月18日10時55分

写真:吉田松陰寓奇処には、肖像画や松陰が使った机などが展示されている吉田松陰寓奇処には、肖像画や松陰が使った机などが展示されている

写真:蓮台寺荘の貸し切り風呂「岩根」=下田市蓮台寺荘の貸し切り風呂「岩根」=下田市

図:【所在地】下田市蓮台寺【交通】伊豆急行の蓮台寺駅から徒歩で約10分、伊豆急下田駅からバスで約10分。【泉質】単純温泉【所在地】下田市蓮台寺【交通】伊豆急行の蓮台寺駅から徒歩で約10分、伊豆急下田駅からバスで約10分。【泉質】単純温泉

 1859(安政6)年、今から150年前の10月に安政の大獄で処刑された吉田松陰。時に数えで30歳、今の私と同じ年だ。

 その5年前、海外密航を企てた25歳の松陰は下田に来た。海岸にペリー艦隊を見に行き、他藩の藩士と会い、幕府の役人を訪ねる。意外に大胆だ。「役人もペリーの応接で手いっぱいだったんじゃ」と市史編纂(へんさん)委員の佐々木忠夫さん(73)は笑う。編纂室からは下田湾が一望できる。黒船に向かって必死に小舟をこぐ姿が浮かぶ。さぞ疲れたろう。

 疥癬(かいせん)(皮膚病)を患った松陰は蓮台寺温泉を訪れ、医師・村山行馬郎の家に身を寄せる。密航は大罪だが、村山は隠し通した。「松陰には、正しいと思ったことに周りを巻き込むパワーがあったんでしょうね」と村山邸(現・吉田松陰寓寄処)ガイドの前原輝雄さん(67)。飾られている肖像画は、なで肩でほっそりしている。いかにも「先生」といった風貌(ふうぼう)だが、秘められた情熱の一端に触れた気がした。

 密航は失敗し、松陰らは罪人となる。その後、故郷の萩で謹慎し、「松下村塾」で維新の志士を数多く育てた。

 「短い人生でも、必ずその中に四季がある」。処刑前日に書き上げた遺書「留魂録」で松陰は語る。塾の門人に種子を残したのが彼の秋なら、大望を胸に小さな風呂で疥癬の肌をこすっていたのは夏だろう。村山邸から小道を歩いて数分の蓮台寺荘で、豪華な風呂につかりながら考えた。今、私はどの季節にいるんだろう。

(文・根岸華奈子 撮影・真田弘宣)

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●蓮台寺温泉 約1300年前に奈良時代の僧侶・行基が発見したと伝わる。湯量が豊富で、下田温泉の旅館・ホテルにも供給されている。石畳の遊歩道「湯の華小路」沿いには源泉がわき出す。無料の足湯もある。天神社には重文の「大日如来坐像」が安置されている。問い合わせは下田市観光協会(0558・22・1531)

●蓮台寺荘 二つの大浴場と三つの貸し切り風呂がある。日帰り入浴は正午〜午後7時半、1000円。1泊2食付き1万6000円から。問い合わせは0558・22・3501。

●吉田松陰寓寄処 松陰の入った風呂が今も残る。前原さんらガイドが、松陰の下田での足取りを地図を使って解説してくれる。県指定文化財。100円、小中学生50円。午前9時〜午後5時。(水)休み。問い合わせは下田市教委(0558・23・5055)。

●弁天島 米艦に小舟で乗り込む直前、松陰と弟子の金子重輔はこの島のほこらに潜んでいた。今は陸続きで、近くには2人の銅像「踏海(とうかい)の朝」がある。伊豆急下田駅からバスで5分、徒歩なら20分ほど。

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(2009年9月15日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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