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キリシタンの歴史刻む島 荒川温泉(長崎県)

2009年10月16日10時7分

写真:水ノ浦教会裏から町並みを望む水ノ浦教会裏から町並みを望む

写真:男風呂からは海に沈む夕日が見える=五島市男風呂からは海に沈む夕日が見える=五島市

地図:【所在地】長崎県五島市【交通】福江島へは、長崎空港から五島福江空港まで30分。空港から車で約30分。【泉質】塩化物泉【所在地】長崎県五島市【交通】福江島へは、長崎空港から五島福江空港まで30分。空港から車で約30分。【泉質】塩化物泉

 穏やかな入り江に面した高台に立つ白亜の水ノ浦教会。空に響く鐘の音。急な石段を腰の曲がったお年寄りが上っていく。

 中国まで約600キロの東シナ海に浮かぶ五島列島の福江島。かつて遣唐使や貿易船が往来し、16世紀半ばにキリスト教が伝わった。以後、熱心な信仰とキリシタン弾圧の歴史が続いた。

 明治に入って禁教令が解かれると、潜伏していた信者たちはそれぞれの集落でわずかなお金と労力を出し合って教会を建てた。「皆で集まり、声を出して祈ることのできる『喜びのシンボル』だったのでしょう」と五島市ふるさとガイドの会の松尾實さん(72)は話す。

 島に点在する13の教会を巡るうち、その多くが海岸の浦々や山あいにあることに気づいた。未墾の地で隠れてマリア観音に祈る信者の姿を思うと、その信仰心に圧倒される。苦しくつらい生活がより強い思いを抱かせたのだろう。

 荒川温泉は島の西端にある。目の前には波静かな湾と小島の緑が広がる。娘と来ていた50代の島の女性は「昨日も来たんですよ。車で20分だけど信号は一つしかないから」と上気した顔で笑った。巡ってきた過酷な歴史が一気に「遠い昔」になった。

 心の安穏を求めて教会へ、一日の疲れをとりに温泉へ。多くの人を支えてきた「恵み」は今も島に息づいていた。教会群を世界遺産にという動きもある。この景観がいつまでも残ってくれることを願った。

(文・牧野祥 撮影・上田頴人)

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●荒川温泉 福江島の西海岸、玉之浦湾の奥に位置し、共同浴場「荒川温泉」(TEL0959・88・2878、午前9時〜午後8時半。300円、小学生150円)がある。以前は東シナ海で漁をする船員の利用が多かった。近くに宿泊施設が3軒。福江島は、約140の島からなる五島列島で最大の島。五島列島には今も約50の教会がある。問い合わせは五島市観光協会(0959・72・2963)。

●水ノ浦教会 1880年に創建され、現教会堂は1938年に建てられた。五島福江空港から車で約25分。

▼堂崎教会は1880年に初代教会堂が建てられた。レンガ造りの現教会堂は1908年に建立。県指定有形文化財。内部はキリシタン資料館になっており、現在も定期的にミサを開催。午前9時〜午後5時(11月11日〜3月20日は4時まで)。300円、中高生150円、小学生100円。同空港から車で約20分。問い合わせは0959・73・0705。

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(2009年10月13日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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