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これからリハビリ45日間…若田さん、なお激務

2009年8月2日

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 日本人で初めて約4カ月半の宇宙長期滞在を終えて帰還した若田光一さん(46)。1日未明(日本時間)、長期滞在員としては珍しく着陸直後の会見に登場し、元気な姿をアピールした。ただ、宇宙は過酷な環境。今後の有人宇宙開発にとって、若田さんの体で起きていることを継続的に調べることは不可欠だ。若田さんの挑戦はまだ続く。

 スペースシャトル・エンデバーの着陸から約1時間後。若田さんは支援要員に助けられて輸送車に移り、米航空宇宙局(NASA)の医療施設に向かった。平衡感覚や血液などを精密検査するためだ。

 国際宇宙ステーション(ISS)に滞在中、体調は崩さなかった。だが、無重量状態では体に負荷がかからず、骨や筋肉が急激に衰える。毎日2時間の運動をこなしても、筋力は約2割落ちて一気に20歳も年をとった状態になる。骨量も骨粗鬆症(こつそしょうしょう)患者の約10倍の速さで減るとされる。

 骨折や尿路結石の危険性も高まっているはずだ。筋肉や骨量がどれくらい減ったか、病気の兆候はないか、などはこれから調べることになる。

 若田さんは着陸当日から約45日間のリハビリに入った。ストレッチ、マッサージから始め、自立歩行、自転車こぎなど負荷をあげて回復を目指す。筋肉は数カ月で回復する見込みだが、骨量が戻るには少なくとも滞在期間のほぼ倍の時間がかかるとされる。

 若田さんはISS滞在時、計画通りにトレーニングを着実にこなし、骨粗鬆症の治療薬も実験的にのんでいた。その効果もきちんと検証する。

 宇宙を飛び交う放射線の影響も調べる必要がある。地上での日常生活で浴びる放射線量は年間約2ミリシーベルト。若田さんは今回、約90ミリシーベルトを被曝(ひばく)したと見積もられている。40年分ほどを浴びたことになる。一方、原子力施設などで働く放射線業務従事者の場合、被曝量は5年間で計100ミリシーベルトを超えないよう規制されており、若田さんの被曝量は、ほぼこの5年分にあたる。

 このレベルの被曝の影響は、厳密にはわかっていない。ただ、NASAが約300人の飛行士を対象に、8ミリシーベルト以上浴びたグループとそうでないグループを比べたら、前者が白内障になる危険性が高まったという研究結果もある。

 放射線医学総合研究所の保田浩志・宇宙線被ばく研究チームリーダーは「集めたデータを今後の健康管理に生かす必要がある」と話す。宇宙航空研究開発機構は米国などと協力し、若田さんに定期的に眼科検診をしてもらったり、血液に含まれるがん特有の物質を調べたりする計画だ。

 精神面でのサポートも大切だ。宇宙に出て価値観や人生観が変わったり、高い目標を達成した後の「燃え尽き症候群」になったりすることもあり、注意が要る。

 日本は、こうした研究成果を今後の有人計画に生かす計画だ。(東山正宜=ケネディ宇宙センター〈米フロリダ州〉、田中康晴)

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