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若田さんのトリビア!

きぼうの先は?

2009年8月7日

写真拡大離脱したエンデバーから撮影した国際宇宙ステーション=NASA提供

写真拡大種子島宇宙センターで公開された宇宙ステーション補給機(HTV)=JAXA提供

 構想段階から25年、若田さんの手で「きぼう」がついに完成しました。日本の有人宇宙開発の大きな節目となったことは、これまで当サイトをご覧いただいた皆さんは当然ご承知だと思います。

 当面は、日本人飛行士が次々とISSに滞在することになりますが、多くの人の関心は、「きぼうの先はどうなるの?」でしょう。その議論で必ず出てくるのが、日本独自の有人宇宙船をどうするか。そこで登場するのが、9月に打ち上げ予定の無人補給機「HTV」。与圧部を持ち、ISSに安全に近づく技術などは将来の宇宙船にもつながるものです。

 ただ、実現するためには、まだまだ技術的な課題は多くあります。いくつかご紹介すると――。

 課題(1)【エンジン】 H2Aに使われているエンジンは「二段燃焼サイクル」という、スペースシャトルと同様の高度な技術です。とはいえ、無人が前提に作られているので、ある系統が故障しても予備が支えて安全に飛び続ける仕掛けなどは不十分。より信頼性の高い新型エンジンが必要です。

 課題(2)【脱出装置】 アポロやソユーズ宇宙船の打ち上げ時、先端に細い棒状の装置が付いているのをご存じですか? これが脱出用の小型ロケットです。打ち上げ直後にトラブルがあれば、飛行士の乗ったカプセルだけを切り離して飛び去り、爆発などから逃れるものです。シャトルはこの装置がなく大きな課題となりました。独自宇宙船を造るには、この技術も欠かせません。

 課題(3)【生命維持装置】 無事に飛び立ってからは、宇宙で飛行士が安全・快適に過ごすための環境を維持することが必須。日本はきぼうの開発を通じて、一部の技術は習得しました。「宇宙日本食」や普段着もすでにISSで使われています。一方、きれいな空気や水を供給する装置やトイレ、船外活動用の宇宙服といった分野はまだこれから。長い歴史を持つ米ロに追いつくのは大変です。

 課題(4)【再突入】 いよいよ帰還となって、大きな関門となるのは、大気圏への再突入です。日本はこれまで、実験機を軌道から再突入させるなど、研究を続けてきました。HTVは今のところ、ISSにドッキング後、ゴミを積んで再突入時に燃やしてしまうことになっています。こうした機会を活用して、本格的な実験につなげるなど経験を積まなければならないでしょう。

 このほか、複雑になるシステムの信頼性を高めたり、地上の態勢を充実させたり、やるべきことは多くあります。

 ここまで見て、どう感じたでしょうか? きぼうは建造と維持で総額約1兆円のプロジェクトです。これを直感的に伝える表現として「国民1人当たり、年にコーヒー1杯(500円)分」と例えられることがあります。宇宙開発の意義や優先順位などについて、当然様々な意見があるでしょう。私も無条件に賛同しているつもりはありません。それでも、とりあえず「年にコーヒー1杯」は負担しても良いと考えています。

 もちろん、日本が有人宇宙船を造り、独自の路線を歩むなら、とても年1杯では済まないでしょう。皆さんはコーヒーを、何杯まで「お代わり」しても良いと思いますか?(高山裕喜)

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