ナッツ、フルーツ……中国茶のお茶うけ事情
中国茶評論家・工藤佳治
――甘さよりは相性の良さで選ぶ
「中国茶に最適なお茶うけは」。
よく出る質問である。中国で見ていると、それほど強くお茶うけの必要性を感じていないように思われる。
「でも飲茶では…」と言われそうだが、あれは香港に代表される地域、広東の文化圏のものである。老人が鳥かごを下げて茶館に行き、朝からお茶を飲みながら読み物をしたり、仲間とおしゃべりをして、小さなお菓子、あるいはシュウマイなどの点心類を食べたりしている光景などは、香港などの限られた地域での話である。
しかも、そんな時間を老人が過ごせる茶館など、香港ではすでに過去のものになってしまっている。しかし、中国の都市部では、このところ大量の、バラエティあるお茶うけに出会う場所が増えてきた。「茶館」である。中国の中でも、茶館の数の多さは杭州の右に出るところはない。当然競争も激しい。
ところが、茶館経営のポイントは、客単価をいかに上げるかにある。お茶一杯の値段は、取ろうと思っても知れている。それで、何時間もいられてはたまらないが、追い出すことはできない。客単価を上げるために、お茶うけの豊富なバラエティ、何種類ものフレッシュなフルーツ、焼きそばなどの軽食、それらをバイキング方式にするのが、流行っている。
そこには、中国のお茶うけが凝縮されている。カボチャの種、ヒマワリの種から始まり、クルミなどのナッツ類、乾燥イチジクや乾燥梅、乾燥ブドウ(新疆ウイグルで取れるグリーンのブドウに少し甘い味をつけたもの)などのドライフルーツ類、スイカ、メロンなどのフレッシュフルーツ、それに日本のサキイカなども加わる。
ローカルなナッツ類なども加わっていく。杭州では、小さなクルミ(「山核桃仁」)などが揃っている。また、台湾の影響もあるのか、甘く味をつけたり、紹興酒で味をつけたりした梅などの新しいお茶うけが次々に登場してくる。
ここで気づいてもらいたのが、餡(あん)のお茶うけがほとんどないことである。見ないところも多い。日本のお茶うけの代表は、「餡」の関係したものである。甘さが凝縮したものだ。
餡は、お茶を超える甘さ、強さをもっている。日本での抹茶や旨味を重視したお茶を飲む文化の中では、お茶は餡と同等な強さを持ち、共存して味わうことができる。淡い感じの緑茶を中心とする中国茶の中では、餡を食べて、お茶を飲んでも、餡が勝ってしまう。だから、中国茶では、ナッツやフルーツといったものが中心となってきたのかもしれない。
ちなみに、私のサロンではお茶うけは出ない。おいしい中国茶は、繊細な味・香りが多い。お茶うけはたいてい、その繊細さの邪魔をする。お茶じたいに十分な甘さもある。お腹がすいてくるアペリティフのようなお茶もある。その時は、お茶うけではなく、食事をした方がよいと思うからである。
次回は、日本人が憧れる「茶館」の話。茶館は、スターバックスに勝てるのか。
(04/26)