プーアル茶ブーム到来か(下)
中国茶評論家・工藤佳治
――上海では静かに、台湾は第2次バブルか
「生茶」。緑茶のペットボトル飲料ではない。プーアル茶で使われ始めた区分の名である。対する区分は「熟茶」。かつては今ひとつ明快に認識されていなかったが、どうやら区分が普及してきた。いずれも、もとは「雲南プーアル茶」。簡単に言うと、製茶の過程で、菌を作用させるのが「熟茶」。香港で一般的に飲まれてきたタイプである。菌を作用させないのが「生茶」。
誕生が古いのは「生茶」の方だが、前回も説明したように、ほとんどが香港で飲まれていた「雲南プーアル茶」は、ずっと「熟茶」タイプのことを指していた。
一方の「生茶」はひそやかな存在だったが、8年ほど前に推定80年物の「生茶」プーアルが、雲南省で見つかり、マニアの間で取引された。
その後、1970年代の「生茶」プーアルが市場に出てきた。
さらに最近では、より緑茶に近い古く寝かせた「生茶」プーアルが一般に広まり、今までプーアル茶が飲まれていなかった地域でも飲まれ始めるようになった。それらの地域では、中国での健康志向ブームもあって、同様に「熟茶」への評価も高まった。
今まで、龍井茶を中心とした緑茶文化圏だった上海にも、プーアル茶を扱う専門店が登場し始めた。つい数年前まで、「臭い」と言っていた彼らの中に、マニアが増えてきている。
ただ、上海の流行は派手なものではなく、静かに浸透している感じだ。
人気が高まり、ワインのように、古いヴィンテージの評価が上がると、当然、取引価格も高騰する。
確かに20年、30年を超えたプーアル茶は、「生茶」「熟茶」とも保存状態が良いと、かび臭さを超え、丸みのある甘い喉ごしになってくる。身体の隅々までに、染み入るような感覚は、何とも言えない温かさで、気学をやっている人は、そこに「気」の存在を指摘したり、「桃源郷のようだ」と大げさな感想を漏らしたりする人さえいる。
一方、劇的なブームとなりつつあるのは台湾だ。台湾では、10年以上前にも第1次ブームがあった。バブルの頃、香港を通して、ヴィンテージものを何とか手に入れたいという動きが過熱した。円盤型に固められた「餅茶」は、重さが約300〜350gくらいだが、そのお茶を寝かせた年数に日本円の「万円」をつけるところまでいった。仮に20年物であれば、20万円という時代であった。バブルがはじけて、いったんブームは終わった。
ところが、2004年冬あたりから、再び「寝ていた子」が起き始めた。お茶好きの間に、「生茶」の年代物である「千年古木」のプーアル茶などが参入し、ブームの兆しが見えると、価格も急騰してきた。台湾経済が順調な証拠でもあろうか。
でも、気をつけて。中国のお茶のプロがいう。「古いプーアル茶はニセモノが多い」。それも素人が見分けることは極めて難しい。お茶屋さん自身も騙されて、ニセモノを売っていることも多い。品選びは慎重に。
次回は、「今年の緑茶、新茶の異変」のお話しを。
(05/31)
中国茶メモ
雲南プーアル茶の入れ方と飲み方
香港などでは、ポットを使って入れる。蓋碗などで入れたり、飲んだりする場合もある。茶壺(宜興紫砂などの焼き物)で入れると、雑味が少なくなり、まろやかな風味を味わうことができる。
このお茶は、必ずと言ってよいくらい、一煎目を捨てる。年代を経ており、放置されている環境も考慮し、洗い流すために捨てる(「洗茶」と呼ぶ)。最近は、「生茶」の新茶を飲むこともあり、その場合は洗茶をしないこともある。
固形茶のばあいは、茶葉の重なり具合を見て、そこにナイフ状のものなどを差し込み、剥ぐように崩して使う。
どの茶葉でも、使うのは少量で可。ほんの一つまみでよい。お湯を注いで、自分の好みの濃さで飲む。濃くなり過ぎたらお湯を足して薄めればよい。他のお茶と違って、それでお茶の独自の味や香りが影響されることはない。