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嗚小小一碗茶

紅茶誕生早まる。世界遺産の奥深い山中から(下)

中国茶評論家・工藤佳治

――さらに早まる誕生説には、疑問も

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桐木に現在ある正山小種のお茶工場
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今も残る昔のお茶を揉む機械。下を流れる川の水を利用し、お茶を揉んだという

 日本人にとって、「紅茶」誕生に日本ないし日本人が遠因としてかもしれないが、関わりがあるとすると、紅茶への興味はもっとわいてくる。

 ところが、今年、桐木ではその誕生を、「1557年頃までには存在していた」と説明し始めた。また早まった。毎年早まる誕生説は、「研究が進んでいる」というにしてはちょっと戸惑ってしまう。

 根拠は、「武夷茶という名前で作られていた」記述が文献の中にあり、それが1557年までの説明にあるので、それまでには作られていたはずだ、というのである。

 文献の国、書き物にして残す国中国ならでは、といってしまってもよいが、その根拠となると、その「武夷茶」は、本当に桐木のお茶だったのか、そして紅茶だったのかが、今一つはっきりしない。前回書いたように、中国から1610年にヨーロッパにお茶が伝わった。紅茶界で世界を席巻するヨーロッパに一早く伝わったはずだ、とする気持ちがどこかに働いていないだろうか。

 説得力にかける気もする。たぶん、桐木から下った武夷山市の「武夷岩茶」を作っている人は、その「武夷茶」こそ「武夷岩茶」であり、それがヨーロッパに行ったのだ、と言いたいだろう。

 ご存じの方も多いと思うが、この「武夷茶」という言い方こそが、中国茶を知ったヨーロッパ人が、その代名詞として使った言葉である。「BOHEA」と綴る。「ボヘア」とか「ボヒー」と呼ばれたのは、この「武夷」の福建語の発音からとったものである。それほど、当時のヨーロッパ人にとっては、魅力的なものであったのだろう。

 桐木の紅茶の人気は高まり、ヨーロッパからの注文は増え始める。桐木は、山が迫り、茶畑などいまだにまとまった広い畑がないくらいである。ここの茶木は、背が低く、葉が小さいのが特徴である。

 そこから「小種茶」といわれるようになった。

 生産量も少ない。ヨーロッパからの注文に応えられない。武夷山から西にいった地域で、桐木の紅茶を似せて生産が始まり、対応しよういう動きが始まった。

 そのため、桐木では「ここのお茶こそ本家」ということで、「正山」とし、それ以外を「外山」と区別し、桐木の紅茶は「正山小種」という名前になる。そしてこの名前は、福建語の発音をなぞって、「ラプサンスーション」とヨーロッパで呼ばれるようになっていく。

 また、この「スーチョン(小種)」は、「白毫」(白毫銀針という白茶がある)の福建語読みが「Pekoe」(ピコーあるいはペコ)の語源となり、ヨーロッパ紅茶の世界で葉の部位として名前が残ったのと同じように(一葉目が、Flowery Orange Pekoe、二葉目がOrange Pekoe、三葉目がPekoe)、葉の部位としても名を残すことになる(四葉目がPekoe Souchong、五葉目がSouchong)。

 この連載の8月3日掲載の項にあるように、「正山小種」は、英国からの注文により、「薬臭い香りがする」と例えられるくらい、強いスモークした紅茶に変わっていった。ちなみにそれ以前の製法を再現して作った桐木の紅茶は、果物の「龍眼」に例えて「龍眼香」といわれるほど、甘い香りと味がする品のよい紅茶である。現在このタイプは一般的には作られていない。

 紅茶の誕生秘話、そして変遷、なかなか魅力的な歴史物語である。近い日には、その誕生年代ももう少しはっきりするであろう。

 世界自然遺産、武夷山の竹の林が迫る山奥の小さな集落。そこから、世界の紅茶は始まった。

 次回は、日本ではお茶うけとしても人気の「月餅」のお話しを。

(09/14)



中国茶メモ


外山・その周辺の紅茶


●政和工夫(福建省)

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 政和県で作られる。白毫銀針に使われる政和大白種で作られる。

 芳醇な味で、ボディは他の中国紅茶から比べると強い。後味は甘い。この紅茶は、ミルクなどを入れてもよいともいわれ、ヨーロッパ向きに作られていたお茶であることがわかる。

 現在は、ほとんど作られていない。


●坦洋工夫(福建省)

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 同じく福建省北部の坦洋で作られる。

 芳醇さ、ボディの強さなどはこの一帯の紅茶と特徴は同じ。おいしく、普段のお茶として飲むのにも最適。

 往時は、ヨーロッパでも評価が高く、紅茶としては福建省一の生産量にもなった。この地域では、花茶も作られることから、次第に生産量も減少している。


●白琳工夫(福建省)

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 福建省北部・白琳で産するのでこの名になったが、このあたり一帯で作られる白毫銀針に使われる福鼎大白種の茶葉を使い作る。

 柔らかな芽を使うことから、丸みのあるボディの紅茶であり、甘さもある。

 鮮やかなオレンジ色の水色も特徴。





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