お茶うけ好きにはたまらない中国の秋
中国茶評論家・工藤佳治
――実りの季節は魅力たっぷり
「私の中国茶サロンではお茶うけは出さない」と書いた(4月26日)。最上のお茶は香り、味においても繊細で、お茶うけの味で肝心のお茶の魅力がぼけてしまう。また、お茶うけがなくても、十分な味、香りを楽しむことができるので、必要ない。というのが理由である。
しかし、日本人は長い習慣から、お茶うけはどうしても必要と感じるらしい。そんな時、薦めるお茶うけは、ナッツ類であったり、ドライフルーツであったりする。
中国の秋は、そんなお茶うけ好きにはたまらないものがたくさん登場する。しかも、全国各地から名産品が集まってくる。「新貨」(新物の意味)と表示され、いかにも「おいしいぞ」という雰囲気で店頭に並ぶ。食品専門店では、特設のコーナーも出来る。
まず、胡桃(クルミ)。お茶うけ用には、殻から出されたものに甘い味がコーティングされ、ものによっては白ゴマが少しまぶしてある。
日本では見かけないものもある。浙江省杭州を中心にした名産の小さな胡桃。「小核桃仁」という名で売られている。直径2センチほどで、ツルりとした球体。大きな胡桃の殻と違って、凹凸はない。
殻がともかく硬い。が、地元の人たちは少し割れ目が入れられている殻を、かじるなどして器用に割り、中の芯を出して食べる。硬くて歯がたたないので、私には無理だが、「通」になればなるほど、殻つきがおいしいと言う。
今は、中の芯だけ出したものが売られている。だんだんそれが主流になってきた。中国の人にとっても、やはり硬いので、楽な方に志向が移ってきたのだろう。
日本の味噌(みそ)に近いものや単純に塩だけなど、味つけがしてある。
今の時期の「新貨」、フレッシュなものがおいしい。
新疆ウイグルからは、干しブドウが届く。「青い」干しブドウだ。まだフレッシュ感が残っている今がおいしい。それだけでも十分甘いが、最近はさらに甘さを加えているように思われるものもある。
そして、日本でいう「甘栗」。中国では、ただの「栗」で売られる。大きな窯に小石が入れられ、回しながら栗が炒(い)られる。中国でも日本の甘栗は、最近好まれていて、その場合は「日式甘栗」で売られている。
寒い風が吹き始め、上海ガニがおいしくなる頃、栗を売るところには行列ができるようになる。上海の市内でも行列ができる有名な栗屋がある。お金持ちはあまり知らないようだが、地元の庶民には結構人気である。
混んでいるときは20〜30分も待つ。寒い風が吹き抜ける中でも、震えながら並ぶ。並んでもおいしいものを買う心理は、どこでも変わらない。
売り切れれば、その日は閉店。また、秋に採れた栗が底をつくと、その年は閉店。次の栗のシーズンまで店が開かれることはない。
売られている栗は、2種類。大きい栗と小さい栗。小さい栗の値段が少し高い。小さい方が、おいしさが凝縮され、甘いからだという。
そんなお茶うけをお供に、フルーティな鳳凰単ソウ(「木」へんに叢)の秋茶でも飲む。一人で飲むのもよし、皆とわいわい話しながら楽しむもよし。口の中にも紅葉の色のように、七変化の香りの色が広がる。
次回は、「飲茶、点心のおいしいお話」を。
(12/02)
中国茶メモ
●鳳凰単ソウ(ほうおうたんそう・広東省)
広東省北部の鳳凰山で作られるお茶。フルーティな香り、多様な味については9月28日掲載の中国茶メモを参照。「秋茶」については、11月16日掲載を参照。
●小核桃仁
小さな胡桃と思うとよい。写真にあるように、小型(直径2センチほど)で表面がツルリとしている。普通の胡桃と同じように、殻から出して中を食べる。しょうゆの味つけが少ししてある。
杭州を中心とした地域の名産とされているが、杭州のある浙江省ばかりでなく、上海などの食品店やスーパーなどでも簡単に買える。
●干しブドウ
新疆ウイグル自治区が名産とされる。緑色が特徴。自然に乾燥させたものでも十分甘く、新物はジューシーな感じが少し残りおいしい。場合によると少し甘く味付けをされているようなものも見受けられる。茶館の茶うけにもよく登場する。
全国的に食品店、スーパーなどで売られている。