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嗚小小一碗茶

「飲茶」が似合うのは、やはり香港か

中国茶評論家・工藤佳治

――なぜかカビ臭いお茶が、お好み?

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 鳥かごを下げた老人が、朝、三々五々集まってくる。鳥の鳴き声を自慢しあう人たち。それとは無縁に、静かに新聞や雑誌を読む人たち。思い思いの時間を過ごしながら、点心を食べ、お茶を飲む。

 香港の「飲茶」のイメージをこんな風に抱く人も、最近ではさすがに減ってきただろう。香港を中心にした茶館のイメージでもあり、「そういうお茶の飲み方をしてみたい」という声を以前はずいぶん聞いた。

 すでに10年くらい前には、冒頭の光景などほとんどなくなっていた。土地が高騰した香港では、このようなタイプの茶館経営が成り立たず、どんどん店がなくなってしまった。

 古くからの茶館で残ったのは、「陸羽茶室」ぐらい。10年ほど前までは、ここで朝の飲茶をしようとしても、日本人観光客は「いっぱい」といわれ、玄関に立ったターバンを巻いて鉄砲を持っているインド人ガードマンに入れてもらえなかった。とくに日曜日の朝は、ダメだった。テーブルは空いていても、そこは常連客(たいていがおじいさん)の個人指定席であり、もう何十年も同じ席でお茶を飲む人のためにとっておかれていた。今は、朝の上得意客は、日本人観光客であり、大歓迎される。

 「飲茶」は日本でもポピュラーになったので、説明の必要もないだろうが、「点心」つまり餃子やシュウマイ、春巻といった軽い食べ物やデザート類の小品をたべながら、お茶を飲むことを指す。餃子やシュウマイなどは、中国の北部がルーツだが、それが広東に来て洗練され、種類も増え、鶏の足の先や内臓料理などの小品、エッグタルトやマンゴープリン、胡麻団子といったデザート類も加わり、そのメニューは100を超えるといわれる。

 小さなセイロを高く積み上げたワゴンをおばさんが押し、狭い客席の間をまわりながら、客はセイロの蓋(ふた)を取り、のぞきながら自分の好きなものを選ぶ。おばさんは、「大」「中」「小」(セイロやお皿の大きさではなく、値段の違い)と書かれ厚紙のカードに並んだ数字に判を押してゆく。勘定がしやすいように出来ている。

 庶民的なレストランは、朝から開いて「飲茶」をやっているが、昼に開く高級レストランでも昼のメニューに豊富な「点心」を用意しているところも多い。気軽な点心類といえども、比べると、店によって味の差がかなりあることがわかる。粗野だがエネルギーがあっておいしいところ、上品で優雅なもの、いろいろである。ともかく、広東料理の一角を成してしまった。

 「飲茶」は特に香港の印象が強い。朝からランニングシャツに短パン姿のおじいさんが、内容も聞き取れないほどの話し声で混みあった店内で飲茶をする姿は、もう見られることはない。雑踏の中で、ワゴンを押すおばさんが、負けずに声を張り上げ、持っている点心の名前を叫ぶ。そんな姿もほとんど見ない。

 香港の「飲茶」で飲まれるお茶は、「プーアル茶」だ。香港では家庭でもこのお茶が常飲されている。しかも菌を作用させて作るプーアル茶のため、カビ臭い。広東料理は中華料理の中でいえば、例えると日本の中の京料理。あっさり系であり、わりに繊細である。けれども食事中も含め、この独特の香り強いお茶が飲まれている。お湯を入れたまま時間がたつと、「真っ黒」になってしまう。その場合は、お湯を入れて薄めて飲んでもかまわない。

 長年置くことで価値が上がる、いわばビンテージもので有名なこのお茶だが、一般的には数年モノが安い値段で売れていて、日常はそれを飲んでいる。よく「痩(や)せる」お茶として取り上げられるが、日常飲んでいる香港人の中にも太った人もたくさんいる。

 また、10年くらい前には、香港の若いエリートビジネスマンを中心に、米国を真似てコーヒーやコーラといった「黒色」の飲み物が避けられた時代があった。黒いプーアル茶も敬遠された。彼らは、レストランなどで「白牡丹」や「壽眉」といった白茶を好んで注文していた。先端ビジネスマンの証のように。

 次回は、「おいしい中国茶の買い方テクニック」のお話しを。

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中国茶メモ


 「プーアル茶(雲南省)」ついては、5月24日31日掲載の中国茶メモを参照されたい。

白牡丹(はくぼたん・福建省)

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 福建省北部の政和県、建陽市などいくつかの地域で作られる。緑色の葉の中に白い芯が見えるようなので、この名になった。水色(お茶を出したお湯の色)も、山吹色を薄くしたように淡泊。味、香りも淡泊な感じで透明感が強い。繊細で、清楚な感じをかもし出している。

 香港で飲まれることが多く、ポットで入れて飲むことが多い。


●壽眉(じゅび・福建省)

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 多く飲まれている香港では、「ソウメイ」とよばれている。福建省北部の建陽を中心に作られる。香港で売られているときは、「白牡丹」の低ランクのものとして売られることが多く、店員もそう説明している。本来は、白牡丹とは違うもの。白牡丹より少し緑色の茶葉が多い感じ。白毫が老人の眉に似ていることから、この名になったといわれる。

 水色も透明感のある山吹色。味、香りも淡泊である。

 同じように香港では、ポットで入れて飲むことが多い。




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