「寒い」を「温める」中国茶は……
中国茶評論家・工藤佳治
――ご存じ「ほうじ茶」は温まりませんか
「暖冬」とはいえ、「寒さ」に弱い人には、耐えるのがつらい季節。お茶でも飲んで温かく、とは言うものの、「本当かな」と感じている方もいるはずだ。まして、薬膳を専門とする一部の先生の話で、「中国では、古来お茶は、身体を冷やす飲み物として考えられてきました」、などと言われると、「やはり、温まりそうもない」という気になってしまう。
ところが、いろいろの種類の中国茶を飲んでいると、「身体を冷やす」という感じはあまりしない。中国茶を勉強している人の多くは、どこかの本を読むのか、あるいはどこかのお茶屋さんで教えられるのか、「白茶の代表でもある福建省で産する“白毫銀針”というお茶は、身体を冷やすので、夏にはうってつけのお茶です」と、よく言う。
実際のところ私は、白毫銀針で身体が冷えたなどと感じたことは一度もない。逆に少し古くなった白毫銀針のよいお茶は、身体が温かくなるのを感じる時すらある。
どうも本当のところは、「メロン」を食べて、身体が冷えるのを感じる人があまりいないように、理論上は「冷やす」分類に入るものでも、それを体感することは、なかなかないのかもしれない。むしろ、冷え切った身体、あるいは普通の状態の身体でも、「温まる」あるいは「手先・足先などの末梢が暖かくなる」という感じは、簡単に体感できるのかもしれない。
「中国茶が身体を冷やす」という中国茶全体を指しての説明は、私の体感や一緒に飲まれてこられた多くの人たちの反応からも、それは正しくない。
以前にも書いた中国医学の基本になる「本草学」では、明代までにまとめられたものまで(『本草綱目』)は、「茶は寒」として説明されている。ところが、明代に中国茶の製法は、大変化を起こし、いろいろの製法の違いによるお茶も登場した。19世紀に入りまとめられた『本草綱目拾遺』では、「寒」だけではなく「温」のお茶も登場してきている。
『本草綱目拾遺』で登場する「温めるお茶」は、福建省北部の武夷岩茶、雲南省のプーアル茶などである。これらのお茶からもう少し広い解釈をすると、「焙煎したお茶」「ねかせたお茶」は、身体を温める、ということになる。
皆さんも実感していると思う。普通の煎茶を飲むよりも、「ほうじ茶」(焙煎したお茶)の方がなんとなく身体が温まることを。
プーアル茶は、「ヤセる」実感より、手足の先から暖かくなる実感の方が明らかに即時的である。
焙煎がほとんどされていない、蒼みも感じる酸化の度合いが極端に低い台湾の半発酵茶でも、よいお茶は飲み進むと皆の顔がポーと赤らむくらい「上気する」のがわかる。
整理してみよう。「強く焙煎されたお茶」(武夷岩茶、木柵鉄観音や台湾の半発酵茶の中で強く焙煎したものなど)や「陳年のお茶」(プーアル茶など)が身体を温めるお茶ということになる。
寒い夜、人恋しくなる夜は、心も温める中国茶をどうぞ。お一人でも、お二人でも、多くの人たちでも、いかようにも温まることができます。
もちろん、日中でもかまいません。
次回は、「今年の春節2月18日には、もう新茶が」というお話しを。
(02/14)
中国茶メモ
「温まるお茶」の例としてあげている代表的なお茶は、すでに登場しているので、そちらを参照されたい。
武夷岩茶: 「中国茶メモ」03/01掲載
プーアル茶: 「中国茶メモ」05/24、01/13掲載
温まるお茶を飲む器は、中国では「蓋碗」、ヨーロッパでは「ミルクカップ」
熱くいれたお茶を、なるべく冷めないように飲むには、世界中各地で蓋付きのカップが使われる。日本の場合でも、蓋のついた茶碗が使われることもある。
中国の場合、蓋付きの茶碗は「蓋碗」。茶葉を入れ、お湯を注ぎ、少し待って持ち上げて、蓋を少しずらして、茶葉が出ないようにしながら、その隙間からお湯を出しながら口をつけて飲む。
中国のニュースなどのテレビを見ていると、会議などの机の上に、少し背の高い、マグカップに蓋がついたようなものをよく見かける。大きくとも「蓋杯」と呼ぶ。飲み方は、茶葉を入れ、お湯を注ぎ、蓋をして待ち、飲むときには蓋を取って口をつけて飲み、また蓋を戻して置き、ということを繰り返す。
ヨーロッパでは、冷めないためのカップとして「ミルクカップ」がある。写真は、ポルトガルの名窯のものだが、ちょっとおしゃれである。これに中国茶を入れ、飲んでもよい。蓋なしよりは、少しは冷めにくい。