「春節」という名の旧正月は、恒例民族の大移動
中国茶評論家・工藤佳治
――そろそろ「新茶」の摘み取りが
掲載されるころには、「お正月気分」も一段落の中国である。
この2週間、中国は浮き足立ち、仕事は停止。民族の大移動であった。「春節」は、日本でいう「旧正月」。旧暦なので、毎年変わる。今年は、2月18日。
その1週間くらい前から、なんとなく殺気立つ。仕事を早々切り上げ、休暇に入る人も多い。忘年会も日本と同じ、あるいはそれ以上に連日連夜続く。職場単位の忘年会も多く、男女関係なく意識なく両脇を抱えられ、中にはタクシーに放り込まれて「病院へ」などと叫んでいるグループも見かける。新宿などで見る光景と同じである。
春節で、故郷へ帰る大移動が始まる。海外からも故郷に戻る。たぶん、億単位の人が移動するのだろう。各交通機関は満杯。ふだん割引料金を設定している航空会社も、この時だけは値引きがない。
そして、大晦日。親類縁者が集まり、大人数で一緒に食事をする。日本ではだいぶ減ったように思う「年越し」のイベントである。そして、真夜中が近づくにつれ、うるさいほどの爆竹が鳴る。花火が上がる。花火は、組織をつくって打ち上げているわけではなく、個人が上げている。
そして一週間のお休み。この2〜3週間は、ビジネスにとっては「あてにならない」期間である。仕事を頼んでも、進まない。
豊かになった人も多いせいか、この休みを利用して海外へ行く人が急増した。香港に行くのはもう飽きた。東南アジアも行った。今年は、アメリカ、ディズニーランドへ。ヨーロッパへ。そして近くは日本。とくに雪を見に北海道へと、海外旅行はブームとなりつつある。
正月4日目の深夜、再度爆竹がなり、花火が上がる。大晦日から元旦にかけてよりも、派手なところもある。5日目はお金の神様「財神」の日なので、それを迎えるためだ。お金持ちは、一発100万円を超える花火も上げるという。
「春節にお茶」と言いたいところだが、特段の関係はない。集まり、食事をする機会が増えるので、お酒を飲む機会は増える。中国でお酒といえば、「紹興酒(しょうこうしゅ)」が日常的かと思われるが、中国の主流は「白酒」(ちなみに「紹興酒」は、「黄酒」の仲間。古くは、各地でこの仲間のお酒が作られていたが、今はほとんど浙江省紹興で産する「紹興酒」がこの代表になっている)。白酒は、有名な産地・銘柄では、貴州省で作られる「芽台酒」、四川省の「瀘州老窖」「五粮液」、山西省の「汾酒」など。
銘柄も日本酒なみに多い。本来は、アルコールが52度前後の強いものだけだったと聞くが、現在では同じ銘柄で、だいたい37〜38度くらいのものも作られている。強いお酒は、欧米では食前酒か食後酒として飲まれることが多いが、白酒は食前から食中、食後まで飲めるお酒である。
お酒とお茶は、同時に飲むことなど想像できないかもしれないが、結構相性がよい。日本でも「烏龍茶割り」があったり、静岡県などでは「焼酎の日本茶割り」がポピュラーだったりという話も聞く。中国ではあまりやらないが、白酒を飲みながら、鳳凰単?や武夷岩茶などをチェイサー代わりに飲むとお酒が進む。白酒は、その銘柄によって香りが違うのも特徴で、それに合う香りの中国茶をあわせるのも楽しい。
2月も半ばを過ぎると、中国南部では茶摘みが始まる。作られるお茶は緑茶。広西壮族自治区、貴州省、雲南省から始まり、茶栽培の最北端山東省を目指す。
今年は、中国も暖冬。お茶どころ浙江省も暖かく、このままいけば、通常3月の春分あたりで摘まれるお茶が早く芽吹いてしまうと、現地では困惑顔だ。茶摘みが早まるかもしれない。
今年の春節。旧暦の巡り合わせで遅いお正月になった。南部ではお正月に新茶の茶摘みである。
次回は、「骨董マニアの憧れ“十二花神杯”という茶杯」のお話しを。
(03/06)
中国茶メモ
雲南毛峰(うんなんもうほう・雲南省)
雲南省で産する緑茶。雲南省のお茶は、プーアル茶が有名だが、雲南省で一般的に飲まれているお茶は、緑茶。
白毫が多く、甘く、柑橘系の香りがすることもある。
この茶名は、雲南省で産する、写真にあるような形状、タイプのお茶を総称して呼んでいる。このタイプのお茶を、「雲南白毫(うんなんはくごう)」と呼んでいることも、多く見かける。
値段も高くなく、おいしいお茶だ。