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嗚小小一碗茶

「気候がヘン」が、「新茶が変」を生む

中国茶評論家・工藤佳治

――それでも「中国の春」の香りは華やかに

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 中国もこのところ気候が「例年どおり」とはいかない。そのために、春のお茶の代名詞「明前」も、もはや死語になってしまうのであろうか。古く唐の時代、皇帝が直轄茶園(貢茶園)を浙江省顧渚山に作り、清明節(4月5日頃)までに都・長安(現在の西安)まで届けさせ、楽しんだといわれる。「西湖龍井」(略して「龍井茶」と呼ぶ)が中国茶を代表する一番のお茶になってからも、春分から清明までの間で摘むお茶を「明前茶」(清明節の前)として、龍井茶の一番茶、最高のお茶とされてきた。

 南北にも広い地域を持つ中国。春茶は、例年2月中旬頃から南西茶区といわれる雲南省、広西壮族自治区、貴州省、四川省などから作られ始め、上海などの茶舗の店頭にも3月中旬くらいには並び始める。

 「新茶上市」。茶舗の店頭にこの文字がウヤウヤしく、元気よく、光を放すように書き出され、春茶の到来を告げる。今年も、上海やお茶どころ杭州の店頭にも、3月中旬には競うように書き出された。

 ところが、並んでいるお茶の内容がいつもと違う。例年であればこの時期は南西茶区のお茶のはずだが、ほとんどない。「龍井茶」がすでにわがもの顔で、主役となって並んでいる。確かに今年に入り、産地の杭州は例年になく暖かい日が続いていた。お茶の摘み取りも早いと予想された。3月10日にはどのお茶舗にも「龍井茶」が並んでいる。気候の変調が、新茶の出来を全国規模で狂わせている。

 実際、杭州の茶畑では、暖かいとはいえ摘み始めは3月15日ころからであった。それより前、店頭に並んでいるお茶は、「龍井茶」という表記はあるが、杭州よりも南で摘まれたお茶が多いと聞く。

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 茶農家や茶舗にすれば、「早い」ほど高く売れるし、消費者も買ってくれる。中国では、店頭の商品表示に産地の表示が義務づけられている。売る質を誇る茶舗では、その産地表示に「杭州」よりももっと細かい茶区を表示し、消費者に産地の良さを訴えているところもある。龍井茶の今一番人気の「梅家塢(ばいかう)」などという表示は、杭州の中の代表的な茶区(畑)を表している。

 その表示が、空欄だったり、浙江省であったりすることがある。「会稽龍井」(産地は紹興)、「大佛龍井」(産地は新昌)などといった龍井茶と同じ作り方・形状をするお茶が龍井茶として並んだり、「烏牛早」(産地は温州)という龍井茶の原型であるお茶を、龍井茶として並べていたりするという。あるいは、他の土地で龍井茶と同じように作って、杭州に持ってきて仕上げられた、いわばOEM製品もあるという。

 こういう話は、お茶の世界の「ササニシキ」と考えると理解しやすい。

 3月15日か16日ころの中国中央電子台(TV放送局)のニュースで、「今、茶舗の店頭に並んでいる龍井茶は、西湖龍井の茶区で作られているものではない。西湖龍井のお茶は、1斤〈500グラム〉1000元以上するはずだ」というニュースが流れた、と聞いた。あまりにも目にあまる、ということであろうか。

 実際には、今年のこの時期の畑渡し価格はニュースよりももっと高く、梅家塢では1斤1500元(約2万4000円)あるいは2000元くらいである。店頭では、3000元(約4万8000円)は下らないといわれる。

 このニュースは、産地表示を正しくするために流れたニュースだが、この日以降の店頭表示が1斤1000元以上に書き換えられたのでは、と心配する。高い価格表示こそ、本物ということになってしまう。

 経済原理は、気候の変動とともに、お茶の店頭での表情も変えていっている。中国の経済成長は、その勢いをお茶でも示して、元気とひずみを作っている。

 それでも、中国緑茶を代表する「西湖龍井」は、今年は「明前」よりも早く、香り高く、華やかに、「中国の春」を私たちに伝えている。今年の「龍井茶」の出来は、なかなか良いように思える。ふだんより、一層華やいで感じる。


 次回は、「日本でも駅にあったお茶給湯設備。中国は近代化されて空港にもある」(予定)です。

(04/07)



中国茶メモ


雲南毛峰(うんなんもうほう・雲南省)


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 雲南省では、緑茶が常飲されている。以前は、スモーキーな緑茶が多く、我々にはあまりなじめないお茶であったが、最近中国の店頭に並ぶ雲南省の緑茶は、日本でも充分楽しめるお茶になっている。 その代表的なお茶が「雲南毛峰」という名で呼ばれる緑茶。茶名は、茶舗が違う呼び名でつける場合もあるが、黒みがかった緑色で、白い芽の部分が多く見られるお茶だ。

 このところ春一番に、上海などの店頭に現れる茶の一つとなった。

 葉の大きい茶樹の種類の芽の部分を中心に摘まれるお茶で、少し苦さが感じられるが、イヤな苦みではない。 なによりも、春の若い、蒼(あお)い感じがすがすがしく感じられるお茶で、口の中が華やいだように、香りが残る。




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