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現在位置:asahi.com>中国特集>鳴小小一碗茶> 記事 ピューター(錫)でいれるお茶は、甘さのイリュージョン2007年08月17日 中国茶評論家・工藤佳治 ―― ヨーロッパ・日本の器を使う、旨味の魔術
古く中国では、「茶」と呼ばれる前は、「★(ト)」と呼ばれ、「ニガナ」の意味であった。最初にお茶に接した人たちも、お茶を苦いものと認識していた。 中国茶で「苦さ」が特徴のお茶といえば、思いつくのが「鳳凰単●(ソウ)」である。 広東省の北部、「鳳凰山」で産し、茶木、葉とも大きめのお茶である。茶摘みは、梯子をかけて摘んだりするという。製茶する段階で、木によってそれぞれが異なった香りになるので、単一の木の茶葉を他の木の茶葉とは混ぜずに製茶することから、「一本の木」の意味の「単●」となった。甘い、フルーティな香りも多く、「蜜蘭香」「桂花香」「芝蘭香」などの名がつけられる。 ところが、このお茶の消費地・香港の茶舗でこのお茶を買って帰ってくると、中に「苦くて」とても飲めないお茶がある。我々が知っている「甘いお茶」のイメージとは違う。 産地の農家の人に聞くと、葉は大きい方の種類なので、もともとは苦いお茶。それを製造過程で、焙煎を加えていくと、いろいろの香り、甘さに変化していく、という。そして、「苦い」だけのお茶も存在する。むしろ、本来の味である。これを好む香港人も多いというのが、その背景にある。 もう7〜8年前になろうか。この鳳凰単●の渋いお茶を、なんとかおいしく飲めないか、と思いついた茶具がある。ヨーロッパの紅茶用ポットで、その中に錫のポットがあったのを思い出した。「紅茶が丸くはいる」ということだった。早速探して買い求めた。この一人用のポットは、中国茶にとっては、「宜興紫砂」(江蘇省宜興産の▲(セッ)器)の小さな茶壺(急須)と似ている。フランス、ルイ14世時代からのメーカー「メゾン・ド・レタン」のものである。一つ一つ手作りで、打ち出す。 これが、驚きの結果を生む。「苦い」はずの「鳳凰単●」が、「甘い」感じに変身したのである。紅茶での効能が言われるように、確かに丸い感じにもなる。 そのうち、このメーカーが中国風を意識した2つのポットを作った。龍を取手に亀の形をしたもの、香港の返還を意識したもの。これらも、「甘さ」に変えるマジシャンの一員に加わった。 5年ほど前、マレーシアで中国茶の国際会議があった。古く、錫を求めて宗主国イギリスは、シンガポールから北へ鉄道を敷いていった。それが今のマレー鉄道になっている。イギリスの影響下、ここに「ロイヤル・セランゴール」という錫のメーカーがある。 このメーカーの錫のポットに、「メロン型」と呼ばれる(私にはどう見ても「カボチャ型」なのだが)ポットがある。中国風のデザインである。クアラルンプールの本社工場を訪ねて買った。 これも、「苦い鳳凰単●」は「甘く」変わった。 日本でも、昔から料亭や飲み屋さんで、酒器のチロリや片口に錫のものが使われている。お酒がおいしくなるといわれている。 京都・寺町。日本でも有名な錫の製品の老舗がある。「清課堂」。大阪行きを途中下車し、訪ねた。日本茶用の横に手のついた急須がある中に、中国伝来の後ろ手のものもあり、それを買った。 早速試してみると、少し違う感じではいるが、「苦い」は「甘い」に変わる。 まさに、イリュージョン。なぜそうなるのかの理由は、わからない。 それぞれのメーカーによって、はいり方は違う。錫合金の仕方が、メーカーごとに違うからだろう。 この錫の器、一つだけ注意がある。とくに香りが特徴の「鳳凰単●」は、なるべく沸騰したお湯でいれ、高い温度で飲むのがコツである。極限まで高温でいれると、器は持つことが出来なくくらい熱くなる。尋常な熱さではない。この高温こそが、甘さマジックの種の一つのような気がする。 「ヤケド注意」。 次回は、「日本人が一番嫌がる中国茶が変身中」(予定)です。 ★は草カンムリに余 中国茶メモ鳳凰単●(ほうおうたんそう・広東省)
広東省北部、鳳凰山で産する。茶木が数メートルにもなるので、梯子をかけて茶摘みをすることもある。茶葉も中程度に大きく、黒ずんで少し細めに撚られている。 製茶の過程で、それぞれの木によって香り、味が異なって仕上がることから、基本的には1本の木から摘んだ茶葉を他の木の茶葉と混ぜずに作る。そこから、「1本の木(株)」の意味の「単●」の名がついた。 香りによって、「蜜蘭香」「芝蘭香」「桂花香」「蜜桃香」などの名称を付加するが、その他茶舗によって独自の名称をつけるところもある。 また、宋代の茶木が残っており、それから摘んだもの(そこから枝分けして育てた茶木もある)を「宋種」といい、名前を加え表現することもある。 |
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