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現在位置:asahi.com>中国特集>鳴小小一碗茶> 記事 「石ヘンに西」の漢字、読めますか。2007年09月14日 中国茶評論家・工藤佳治 ――この漢字を使った中国茶が目についた
秋に中国茶の事典が出版されるので、1200を超える銘茶のリストを作っていた。その中で、以前の茶名と違うお茶があるのに気づいた。昔からある銘茶なのに、なぜ変わったのか、以前の茶名で残すべきか、新しい茶名で載せるべきか、などと迷っていた。 そんな時、同じ漢字を使ったお茶をいただいた。「富●」がどちらにもついている。いただいたのは「富●清明茶」。貴州省雷山で作られるお茶である。よく見ると以前からの銘茶「銀球茶」を作っている茶工場が、作ったもの。「清明」は、二十四節気の一つの「清明」である。お茶の世界では、日本で言う新茶が、この「清明」のころ多くの土地で作られる。 一方、茶名の選択で悩んでいたお茶は、「紫陽毛尖」。陝西省紫陽で作られるお茶で、古くから飲まれている銘茶である。以前は、ただ「紫陽毛尖」であったものが、数年前に発刊された中国名茶の大事典では、「富●紫陽毛尖」として紹介されている。 「●」。日本語読みでは「せい」。中国語読みでは「xi(シー)」。ふつう、日本語でも漢字で書かれることはまずないので、読めなくて当然である。「セレン」がその意味。原子番号34の元素である。 このセレン、人間にとって必須の微量元素である。最近では「抗酸化作用」があることが言われて、関係分野では次なるヒット開発にと、注目を集めていると聞く。ふつうに摂取する肉、野菜を通して、必要量は補えるとされる。欠乏することで、貧血や高血圧などになる可能性が言われる一方で、過剰摂取によって食欲不振や吐き気などが指摘されている。 大切なのは、必要量と過剰量の差が極端に少ないので、その摂取の仕方が非常にむずかしいこと。そのために、関連する業界が開発に慎重になっているとも聞く。 なぜ、中国茶に「●」が強調されるのか。 考えられるのは、黒龍江省や河南省の特定の地域において、セレンの欠乏が原因と考えられる疾病が発生したこと。その地域の土のセレン含有量が極端に少ないことが原因とされる。それでセレンへの関心がより現実味をおびているのかもしれない。 いただいた「富●清明茶」も、説明によれば通常のお茶の15倍セレンを含有しているとあり、それをくださった中国医学を長くリードしてきた老教授も、治療の一助に使っているとのことであった。 専門家に聞いたところ、セレンは水溶性である。当然お湯にも溶けだすので、医師であればセレン欠乏の薬として使用することは、うなずける。 ただし、素人はどう対処したらよいのだろうか。「紫陽毛尖」は、長い時代飲み続けられて、その害が報告はされていない。とはいえ、問題は量の取り方である。正直、迷う。その迷いを大きくするのは、「富●清明茶」は最近飲んだお茶の中でも極上のおいしさであった。 日本のお茶でも、「食べる」ことで成分のより多くを摂取でき、身体によいと言われるが、「食べすぎる」ことで食欲不振などの害があることも事実である。カテキン抽出物の投与し過ぎによって、鶏などが死ぬことも聞いた。 「ほどほどに」ということだが、お茶の場合むずかしい。抽出の仕方によっても違うだろうし、もちろん個人差も大きい。 「●」という字の疑問から発した出来事、飲み方の解決はずっとないまま、「富●」のお茶は「おいしいよ」と微笑んでいる。調べてわかったことだが、「セレン」の名前の由来は、ギリシャ語で月あるいは月の女神「セレネ」。やはり「女神」は微笑むのか。 次回は、「銃弾は健在なり。ヨーロッパへ」(予定)です。 ●は石ヘンに西 中国茶メモ紫陽毛尖(しようもうせん・陝西省)
本文にあるとおり、最近では「富●紫陽茶」を総称として、「富●紫陽毛尖」「富●紫陽翠峰」などの細分化した名称で呼ばれている。歴史的には、「紫陽毛尖」でよばれてきた。 唐代にはあったといわれる茶区で、このお茶としては清代から作られてきた。 爽やかな感じのするお茶で、甘く後味が残る。 茶葉は、深い緑色で、少し黒ずんで見える。 |
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