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「美人」をもっと美しくする(上)

2008年02月21日

中国茶評論家・工藤佳治

――「中国茶とお酒のお洒落な関係」の結論は…

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 販売店を日本中にたくさん持つティーショップから、講演を頼まれた。テーマは「お茶とお酒のお洒落な関係」。過去に「お茶とお酒が合わないはずはない」と言ってしまったことで、こんなテーマが与えられた。お酒をあまり飲めない私だが、言ったことへの責任から、やらないわけにはいかない。

「お茶」と「お酒」は、一見すると相反するものである。お酒でせっかく気持ち良く酔ったのに、お茶を飲むことでほとんど無意味になることもある。瞬時にスーと醒めてしまう。

 けれども、今では飲み屋さんでも「ウーロン茶割り」はお酒の定番メニュー。静岡県の飲み屋さんでは、焼酎の日本茶割りは定番とも聞く。さすがお茶どころ、相性は決して悪くはないはずだ。

 しかし、「お洒落」という言葉がひっかかる。飲み屋さんでの「…割り」のイメージではない。参加される方も、「どんなお洒落な」と思ってこられるに違いない。と悩みつつも、開催1か月ほど前、何も決まらないまま打ち合わせに臨んだ。初めて会う担当の方に、「何も決まってない」など言えない。それらしくお話ししながら、決めることになった。

「最初にはどんなものを」と聞かれて、それらしく「食前はシャンパンでしょ」と言ってしまった。でもこれには自信あり。8年ほど前、「フレンチと中国茶のマリアージュ(なぜか企画には横文字が多い)」と題して、フランス料理のメニュー進行に合わせて中国茶を楽しむ会をやった。その時に考え出したシャンパンと言っても気づかれないほど似た感じの中国茶が、頭をよぎった。お酒が飲めない人でも、シャンパンを楽しんだ気分に十分なれる。

 中国緑茶の中で、旨味の強いお茶を低温状態で3日間程度抽出し、そのすごく濃いお茶を5倍程度に炭酸の入ったミネラルウォーターで希釈すると、色、泡の感じばかりでなく、飲んだ瞬間にふっと酔うような感じになる。一つ目は、これで決まった。

 1時間という短い時間なので、間に「白酒」(中国で広く飲まれている透明な蒸留酒)をイタリアの「グラッパ」と偽って、プーアル茶をチェイサー(水)代わりに飲んでもらうことも決めた。もちろん騙し続けるのではなく、お酒の種明かしはする。間違えるくらいフルーティな「白酒」もあるので、それを使う「遊び」である。

 そして最後は、デザートのお酒とお茶。別々に出すのでは、何の工夫もおもしろさもない。

 話をしながらひらめいた。デザートワインは、甘いワインである。「貴腐ワイン」は、ブドウを木に付けたまま発酵させて糖度をあげる。「アイスワイン」は、木に付けたまま凍らせて糖度をあげる。そして「パッシート」と呼ばれるブドウを摘んで、数か月陰干しをすることで糖度をあげるものもある。今、イタリアの「パッシート」ワインが人気、と最近イタリアで聞いた。とくに、ファッション界の雄・アルマーニが別荘を持つ小さな島・パンテレリアで作られる「パッシート・パンテレリア」の人気が高い。パンテレリアは、イタリア一番と言われる塩漬けのケッパーで有名だが、この頃ワインも人気だ。

 この甘美な香り、甘さを中国茶に吸着させることはできないだろうか。

 「吸着させる」と考えたのには理由がある。ブランディーを角砂糖にかけ、さっと火をつけてコーヒーに入れる「カフェ・ロワイヤル」。同じように紅茶に「ティ・ロワイヤル」もあると聞く。

 しかし、飲むときにアルコールがきつく鼻に入るのが気になる。瞬間、むせることもある。これを、むせることなく、まろやかに、甘美な世界へ導くには、「落とす」のではなく葉に「なじませる」。茉莉花茶(ジャスミン茶)のように香りを「吸着」させることで、実現できるのではないか、とひらめいた。

 今まで誰もやったことがないのではないかと思われる冒険。はたして…。(次回へ続く)

中国茶メモ

白毫烏龍茶(はくごううーろんちゃ・台湾)
別称:東方美人など

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 青茶(半発酵茶)に分類されるが、飲んだ感じはほとんど紅茶である。

 台湾を代表するお茶で、欧米でも人気を博し、その甘美な味・香りから「オリエンタル・ビューティ(東方美人)」と呼ばれた。

 白い産毛を持った芽の部分と、酸化が進んで紅色に変わった葉の部分が一緒に見える茶葉である。稲の害虫でもあるウンカが茶葉を噛むことにより、葉が独自の発酵(酸化)が進むと言われる。

 茶を出した色は、紅茶と同じ紅色になる。フルーティな香り、上品な甘みが特徴のお茶である。

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