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「美人」をもっと美しくする(下)

2008年03月03日

中国茶評論家・工藤佳治

――「中国茶とお酒のお洒落な関係」の結末は…

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 イタリアで密かに人気のリゾート地、ファッションの雄・アルマーニも別荘を持って気軽に釣りを楽しむ「パンテレリア島」。そこで作られる上品で甘美な、人気のデザートワイン「パッシート・パンテレリア」。これを中国茶に吸着させることで、「お茶とお酒のお洒落な関係」は完成を見るのでは、という試み。誰もやったことのない、未知への期待と不安の挑戦となった。

 まず、吸着させる相手のお茶選びである。打ち合わせをしながら、ひらめきの連鎖である。パッシートは、陰干しのブドウを使うことで糖度があがり、独自の甘美さが出てくる。同じような作りのお茶はけっこうある。

 この時、ある光景が思い出された。台湾の茶畑でのことである。

 稲の害虫でもある昆虫「ウンカ」に葉を噛ませることで、葉が木に付いたまま独自の変化が進み、その結果、甘美で風味のある半発酵のお茶となって世界で人気を博したお茶がある。噛まれた葉をどの程度まで変化させるかは、その農家の技量が試されることになる。

 デザートワインの作り方と共通性がある気がした。

 浮かんだ風景は、変化した葉を摘んだ後の風景である。

 春から夏に向かっての南国の風は、高度が少しあるところでは、木陰を通ると爽やかでそよそよとした風になる。その木陰に、先ほど摘んだ茶葉を大きく平らな竹のざるに広げて置く。太陽が移動すると、次の木陰を追ってざるを移動させる。そのたびごとに、酸化の具合を確かめながら、葉を揺すってやっている。

 そよそよとした心地よい風。木陰を移動しながら、風に触れながら葉は変化を続けていく。作り手は細心の神経を払い、その変化を見逃すまいとしている。逆に茶葉は、甘美な完成への時間をゆったりと過ごしているようにも見える。

 「パッシート」の陰干しのイメージと、たゆたう時間を楽しむように作られた茶葉のイメージが結びついた。

 「お茶は白毫烏龍茶でいきましょう。それにパッシート・パンテレリアを吸着させます」。こう言ってしまった。おいしく甘美なデザートのため、あるいは心地よい眠りの前のためのお茶になるかどうかは、正直いってわからない。香りの吸着の作業などやったこともない。

 ふだん皆さんに「茉莉花茶」などの香りの吸着方法を説明しているが、液体の吸着は訳が違う。

 考えた。そして試した。

 お酒を直接かけるとお茶が抽出されてしまう部分がむらに出来、たぶん仕上がっていれたお茶はまとまりがつかないお茶になってしまうのでは。まんべんなく、しかも茶葉がシットリするくらいに、霧吹きを使いパッシートを吹きかけた。人が来るので、部屋中にアルコールの匂いが充満するのも困るので、平たいタッパーを使って、蓋をした。

 一日おいて、そして茶葉を乾燥させ、また霧吹きでお酒を吹きかけた。この作業を3回繰り返して、試飲をしてみて思わず「ニヤリ」。なかなかである。

 こうして作られたお茶は、当日予想以上の「驚き」と「満足」の評価を得た。

 古くこのお茶は、国外で「オリエンタル・ビューティ」と呼ばれ、通称が「東方美人」となった。イタリアのお洒落なお酒「パッシート・パンテレリア」と結ばれた時、「美人」は新しい美しさを甘美に、そして少し妖艶に解き放った。あとには、上品で優しく、そして秘められた色香が少し長く残った。

 次回は、「お茶で仙人になる?」(予定)です。

中国茶メモ

文山包種茶(ぶんざんほうしゅちゃ・台湾)

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 青茶(半発酵茶)のお茶の中で、一番発酵(酸化)度が浅いお茶である。味わいも、丸い感じのする緑茶に近い味わいである。

 葉が少し成長した状態で、芽とその下の葉二枚を一緒に摘む(一芯二葉)ことを基本とする。

 少し蒼さのある香り、清らかな味、残る甘さ(旨み)が特徴で、「清香(チンシャン)」のお茶の代表ともいえる。何煎も飲み進むと、舌の付け根のあたりに甘さが残り、長く続く。また、煎を追い飲む度に、香り高く戻り香がある。

 香りの春茶、甘みの増す冬茶と、良いお茶でも年2回は摘む。

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