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思想家の先人、書家の先人は、なぜか山東省に関係する

2008年10月8日

  • 中国茶評論家・工藤佳治

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――お茶を飲んでいると、いろいろのことがわかる

 10年ほど前、「雪青」というお茶が好きになり、今も好きだ。当時の中国緑茶は、けっこうスモーキーなものも多く、日本茶に慣れた嗜好にとっては、好きになれないものも多かった。「雪青」は、日本茶にも比較的近い香り、味で、澄んだ丸さと、後味の旨みがよいお茶だ。

 このお茶を使い、2日以上をかけて抽出し、その濃い液をフランスのガス入りミネラルウォーターで割ってみた。少し緑だったお茶の色が若干白濁し、発泡する。お酒の飲めない人用に、フランス料理のアペリティフで、シャンパンのように飲めるものがつくりたかった。出来上がりは、ほとんどシャンパン。一口飲んだ時、少し上気するような感じがあることもあり、多くの人がシャンパンと騙された。

そんなこともあり、「雪青」の産地・山東省は、身近な感じがする省であった。

 山東省は、前にも書いたが、お茶の生育の北限より北にあった。建国以来北限を超えてお茶栽培を出来るように、「南茶北引」というプロジェクトが組まれ、それが成功して出来たお茶である。

 名前もきれいなお茶で、雪が多かった冬を超え、春に収穫されたお茶の出来がよかった。それで、このように名付けられたという。山東省日照で産するお茶である。

 山東省青島へ行ったのは、2年半ほど前。「青島ビール」で日本でもなじみが深い。1800年代の最後から、ドイツが租借地としたため、ビールが作られるようになった。今では、中国の地ビールを買収して、全国ブランドとして、ほぼどこに行っても飲むことができるような気がする。でも、青島のビール工場で飲むものは、格別においしい気がする。青島の街角の多くにビールの測り売りがある。雑貨屋のようなところでも売られている。日本では考えられないが、ビニール袋に入れられ、それを下げて、持ち歩く人を多く見かける。

 その他、中国は、朝鮮半島とは、古くから陸路ばかりでなく、山東半島からの海路を通しても交流があった。中国と朝鮮半島との陶磁器の交流も、海路も通して行われたと聞いた。

 比較文化を研究され陶磁器や書などに造詣も深い、中国芸術研究院をはじめいくつもの大学の教授で、日本にお住まいの龍愁麗先生からこんなことを聞いた。「書の王羲之(オウギシ)や顔真卿(ガンシンケイ)の原籍、孔子や孟子の生まれも山東省の同じ地域なんですよ」と。

 私は、書にはまったく造詣はないが、王羲之や顔真卿は、書を習う人が必ず彼らの拓本や書を練習することは聞いている。顔真卿の書体は、印刷に使われていた写植の字体やパソコンの文字のフォントですら見たことがあり、現代に生き続けている。彼はまた、茶の領域でも、『茶経』を書いた陸羽と深い交流があり、陸羽がもっとも影響を受けた人物の一人としても知られている。

 調べてみると、現在の地名でいえば、300年代の東晋を生きた王羲之の原籍は山東省臨沂(リンキ)。700年代の唐代を生きた顔真卿も、生まれは陝西省西安だが、原籍は王羲之とまったく同じところ。

 紀元前500年代から400年代を生きた孔子の生まれは、そこから少し西にある曲阜(キョクフ)。同じく紀元前300年代から200年代を生きた孟子は、曲阜の南に隣接した鄒城(シュジョウ)で生まれている。

 この四人は、広い中国の中、山東省の約100キロ四方の地域に原籍や生まれたところがある。偶然であるのか。この地域は、現在に至るまで影響を与え続けている思想家、書家の集中産出地である。

 お茶に触れていると、お茶以外のいろいろのことがわかる。おもしろい。

 次回は、「秋の夜長に飲むお茶は……」(予定)です。

中国茶メモ

雪青(せっせい・山東省)

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 2年前一度、このコーナーで紹介しているが、バックナンバーからは消えているので、もう一度紹介しておく。

 お茶についての説明は、本文中に出ているが、写真では茶葉が黒っぽくみえるが、実際は黒味をおびた緑色の茶葉に、産毛が白く見えかくれし、後味の甘さを予感させる。

 雪青が産する日照では、「浮来青」というお茶も産しており、こちらもおいしいお茶である。

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