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天才・点心師か。大阪に現れる

2011年4月26日

  • 中国茶評論家・工藤佳治

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――「飲茶」。香港では、ほとんど「プーアル茶」

 「点心」――。「飲茶(ヤムチャ)」とは、切り離せない。広東料理の文化圏では、「点心」を食べながら、お茶を飲む。点心は、餃子や焼売、春巻などの料理からスイーツまで、多様な小品を指していることはご存知のとおりである。朝食、昼食、午後のお茶、夜食にまで「飲茶」は広がっているが、点心じたいは、食間の小腹が空いた時にちょっと食べるものであったという。

 30年ほど前、香港にしげく通う目的は、「食べる」ことであった。お粥が苦手な私は、朝から点心を出している店を探し、朝食に点心を食べていた。朝だけでなく、昼も点心を食べることが多かった。経験的には、点心は、どちらかというと、レストランの間で味に差が小さい料理である。おいしい、まずいはあるものの、メインの料理に比べれば、ずっとその差は小さいと思える。

 香港での朝、昼に点心を食べる経験が増え、間もなくあることに気づいた。おいしい点心の中でも、たとえば「エビ餃子」を例にとると、「野趣あふれて」おいしい「エビ餃子」と、「上品で清楚な味わい」でおいしい「エビ餃子」があることがわかった。当たり前のようだが、味の差が小さいイメージが強かった私には、発見であった。もちろん、それぞれに魅力があることは言うまでもない。

 当時の香港の経験では、「上品な味わい」の点心はごく限られた店のものであった。点心を作る人を「点心師」といい、メインの料理を作る料理人とは区別されている。その中で、「上品な味わい」を作る点心師は、「野趣あふれる」点心師よりも圧倒的に少ないと思えた。

 3月の初め、大阪の「予約がとれない中華」で有名な店の大澤シェフからお誘いがあった。今度点心を出す店をオープンするので、食べて感想を聞かせてほしい、という誘いであった。

 大阪での教室のあと、まだオープンしていない店を訪ね、食べて驚いた。「上品な味わい」の点心の数々がそこにあった。しかももっと驚いた。シェフが指導をしながら、点心を作っているのは弱冠21歳の女性の点心師。発想力豊かなシェフのイメージを生かし、しかもオーソドックスな点心の各種を作り上げている。まさにゴールデンコンビで、その出来ばえは見事に、「気品があり、清楚でありながら、力を感じさせるもの」であった。香港の「上品タイプ」の一流点心師に負けない味だ。

 点心師の彼女が作るものは、完成度が高く、長く印象に残る味である。たぶん本人は、まだ自分の実力に気づいていない。この若さである。天賦の才があるのだろう。逆に、若くしてここまで完成されていると、これから先、どうように自分の味を伸ばしていくのか、大変だろうな、と心配になるくらいであった。

 「飲茶」では、「点心」にお茶はつきものである。香港では、日常飲まれている「プーアル茶」が飲まれる。大きなポットに茶葉とお湯が入り、テーブルに出される。時間が経つと、ポットのお茶は真っ黒になる。ポットの蓋をずらしておくと、お湯を注いでくれる。濃くなりすぎたら、そうして薄めながら飲む。お湯がなくなって、ポットにお湯を足してもらいたい時も蓋をずらしておく。

 高級レストランでは、蓋碗(蓋のある茶碗)で出てくるところもある。それを別の茶碗にあけて飲む。ボーイがチェックをして、蓋碗のお茶が濃くなるとお湯を足してくれたりする。

 プーアル茶は、長時間にわたり出るお茶だ。ほんの少しの茶葉で、永遠に出るのでは、と思うくらいよく出る。中華料理の中では、どちらかというと薄味系の広東料理だが、一番カビ臭さを感じるプーアル茶を、香港では食中にも飲んでいる。香港人の味の不思議の一つでもある。

 次回は、「好評。おまけの中国茶」(予定)です。

中国茶メモ

雲南プーアル茶(うんなんプーアルちゃ・雲南省)

 プーアル茶は、雲南省で生産されるが、香港を中心に常飲されている。プーアル茶には、茶葉の形状がいくつかある。茶葉を固めたタイプ(固形茶)と、私たちが日本茶などで通常飲んでいる、茶葉がバラバラのタイプ(散茶)である。

 固形茶のタイプには、代表的に3つの形状があると覚えておくとよい。

 「餅茶」とよばれる円盤状に固められたもの。直径約20cm、重さが約300〜350gくらいが標準形である。

 「沱茶」は、お碗のような形に固められたもの。直径15cmくらいが標準だが、それより小さなもの、あるいは大きいものもある。

 「磚茶」は、長方体に固められたもの。「磚」は、レンガやカワラの意味である。大きさ、重さもいろいろある。正方形に固めたものを「方茶」とよんでいる。

 「散茶」は、常飲される香港では、ほとんどこのタイプの茶葉が使われている。

 値段もピンキリである。

写真は左上から時計回りに「散茶」「餅茶」「磚茶」「沱茶」。

(プーアル茶の説明は、このコラムの2009年10月13日のバックナンバー「中国茶メモ」を参照してください。) 

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