現在位置:asahi.com>中国特集>Road to 北京> 記事

Road to 北京

良き友人、良きライバル 中国 増田明美さん(中)

(04/17)

 ソメイヨシノから八重桜へと春のリレーが行われた頃、中国・温家宝首相が来日。代々木公園を走る姿が映像で流れ、私はランニングフォームに注目した。フォームはその人を表すが、ひたすら遠くを見て走る目線が印象的だった。そのジャージの胸に北京五輪のシンボルマークが光った。4月15日には北京五輪の中国国内向けの入場券がインターネットで発売開始され、着々と五輪へ向けて準備が進んでいるようだ。

写真  

 今、日本の女子マラソン選手たちの多くが中国・昆明で合宿を行っている。北京の南西数千kmにある高地だが、合宿中の三井住友海上陸上部監督の鈴木秀夫さんは「とにかく建設ラッシュがすごい。練習コースも工事が多くて大変だよ」と話す。昆明には以前、馬軍団が走り込んだという“馬コース”がある。日本選手の格好の練習場所になっていたが、その道が高速道路に続くため、大型車の通行が増え、道がでこぼこになり、今は走る選手がいないという。

 ところで、私は日本選手の最大のライバルとなるであろう選手として中国の周春秀選手(28)をあげたい。彼女は昨年12月に開かれたドーハ・アジア大会女子マラソンの金メダリスト。何がすごいかって、腹筋だ。短いタンクトップのユニフォームの下、奇麗に割れた腹筋が彫刻のように表れていた。「トレーニングの成果は腹筋に表れる」と、高橋尚子さんはよく話すが、周さんの腹筋は、積み重ねた練習の“時間”を感じずにはいられない。ウエートトレーニングで付けたものとは違う、様々な路面、様々なアップダウン、とてつもない距離を走ってきたことを思わせるものだった。

 中国はアテネ五輪でも、まったくマークされていなかったケイ慧娜選手が女子1万メートルで金メダルを取るなど、若い選手たちが急ピッチで育っている。マラソンのナショナルチームは、1年のうち2、3カ月間、一緒に生活し、高地合宿を中心に強化を進める。そのナショナルチームのコーチに、日本の竹内伸也さん(元・東海銀行陸上部監督、大南姉妹の恩師)が招聘(しょうへい)され、現在、雲南省で合宿中である。竹内さんは、沖縄の大学で教鞭(きょうべん)を取っているが、夏休みや春休みには中国ナショナルチームに合流し、指導している。シンクロナイズドスイミングの井村さん(元・日本ナショナルチーム監督)も、中国のコーチとして活躍している。日本の技術やノウハウが、勝つ上で非常に高く評価されているのだ。

 日本の女子マラソンにとって、これから中国の存在は大きなものになるだろう。自国開催の五輪に向け、益々強化が進む中で、いつどんな選手が現れてもおかしくない。男子はアフリカ勢が強敵だが、女子はむしろ中国が怖いと私は思っている。

 数千年の友好の歴史がある、日本と中国。中国は、日本の女子マラソンの指導法を学んでいる。また、日本選手たちは昆明を中心に中国の道を借りて強くなっている。良き友人であり、良きライバルなのだ。

顔写真

増田 明美(ますだ・あけみ) スポーツジャーナリスト

 1964年、千葉県生まれ。成田高校在学中、長距離種目で次々に日本記録を樹立する。1984年のロス五輪に出場。1992年に引退するまでの13年間に日本最高記録12回、世界最高記録2回更新という記録を残す。現在はスポーツジャーナリストとして多方面で活躍中。2006年にはタイ・プーケットでマラソン大会を開催し、スポーツによる国際交流にも注力。大阪芸術大学教授、文部科学省中央教育審議会委員、新健康フロンティア戦略賢人会議委員なども務める。

公式サイトは「増田明美's Home page」 http://www.akemi-masuda.jp/別ウインドウで開きます

asahicom書籍紹介

Road to 北京一覧


このページのトップに戻る