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Road to 北京

オリンピック・スタジアムの建設現場 田代秀敏さん(2)

(06/22)

 五月末に北京に行ってきました。日中両国の政府が合同開催するシンポジウムに参加することが第一の目的でしたが、北京在住の中国人の友人に案内を頼んで、オリンピック施設の建設現場に連れて行ってもらいました。

写真「北京の秋葉原」と呼ばれる中関村
写真五輪スローガンを掲げた看板
写真中国オリンピック委員会が入った高層ビル。大きな垂れ幕が目立つ
写真「鳥の巣」の近くを流れる人工川。風水に基づく設計という

 見学に行く前に、「北京の秋葉原」と日本で言われている中関村に寄ってきました。デジタルカメラのメモリー・カードを買うためです。中関村の大きなビルの中には、色々な電気メーカーの店舗がぎっしり入っており、電気製品のデパートといった感じです。

 中関村の中にも、オリンピック関係のスローガンを書いた大きな看板がありました。しかし、こうした看板は街中であまり見かけませんし、道行く人は看板に全く無関心の様子でした。

 中関村では、AIGUOつまり「愛国」というブランドの中国企業製品も売られていますが、人々の人気は圧倒的に日本企業ブランドに集中しています。北京の街のどこでもそうですが、中関村でも「反日感情」なるものは、かけらもありません。販売されている日本企業ブランドの製品は、Made in Chinaでも日本とあまり変らない値段でした。

 日曜日でしたが、客よりも店員の方が多かったです。店員は皆とても若くて20代半ば以上と思える人は皆無でした。聞けば彼等そして彼女等は給料がなく、パソコンなどを一台売ったらいくら貰えるという完全歩合制です。ですから、1人の客に5人以上の店員が群がって、懸命にセールスします。なかには、諦めたのか、客が歩いているのを呆然と見ているだけの者もいました。

 そんなわけで、中関村の雰囲気は「秋葉原」というよりも「アメ横」といった感じでした。中国が、「世界の工場」として、大量の安くて若い労働力を外国企業に無際限に供給していることを、まざまざと見せられた思いでした。それでも、ビルの前では若い人達が献血をしており、中国が着実に豊かになっていることを実感しました。

 中関村からオリンピック・スタジアムの建設現場に自動車で向う途中で、中国オリンピック委員会が入った高層ビルの前を通りました。日曜日のせいなのか、ビルの周りには誰もいませんでした。

 しばらく走ると、「鳥の巣」と呼ばれる奇抜な外観のメイン・スタジアムが見えてきましたが、巨大で全貌を撮影するのが難しく、工事現場の周囲を自動車で走り回ってもらって、ようやく撮影できました。

 隣接するプールの壁は半透明で、魚の鱗のような凹凸があり、競技が夜に開催されると内側から光る仕掛けです。

 メイン・スタジアムとそれに隣接するプールとは既に完成しているらしく、工事の足場は一切ありませんでした。しかし、施設の周囲の芝生や樹木などは、まったく手付かずの状態で、あと100日たらずで全体が完成するとは到底思えなかったのですが、中国人の友人によれば「いつもの通り絶対に完成する」とのことでした。スタジアムの周囲には人工の川が作られて、風水の流儀に沿った設計になっていました。

 2時間ほど工事現場の周囲を自動車でぐるぐる回ってきましたが、日曜日だというのに、工事現場を見学に来ていたのは、私と私に付き合わされた友人との二人だけでした。

 私は東京オリンピックの際には小さな子供だったし、そもそも東京に住んでいなかったので、代々木のオリンピック施設の建設現場を見学した人がいたのかどうか分かりません。

 しかし、1963年の東京の人々は、現在の北京の人々よりも、オリンピックに関心があったように思えます。だからこそ、東京オリンピックが終了すると日本人は「燃え尽き」て、景気も株価も低落したのではないだろうかと想像します。

 しかし、北京の人達のオリンピックに対する無関心というよりも冷淡さを見ていると、オリンピックが有っても無くても、景気にも株価にも影響はないだろう……と考えながら、黄砂が舞って黄色にそまった風の中で、スタジアムの建設現場を撮影していました。

顔写真

田代 秀敏(たしろ・ひでとし) エコノミスト

 福岡市生まれ。一橋大学経済学部卒業。一橋大学大学院経済学研究科で経済学修士号を取得。一橋大学国際共同研究センター研究員などを経て現職。著書に、賀暁東と英華との共著『沸騰する中国経済』(中公新書ラクレ)。『文藝春秋』2007年5月号の特集「中国経済 七つの恐怖」を企画・執筆。

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