12月1日開幕の北京五輪アジア予選決勝リーグが近づいてきた。31選手が参加している宮崎合宿から、絞り込みを経て台湾・台中市に乗り込む日本代表選手は24人。あとはコンデションをどのように整え、ケガなく臨めるか。この点に関心は移る。
優勝した昨春のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に比べると、野手はイチロー(マリナーズ)、小笠原(巨人)、福留(中日)、岩村(デビルレイズ)が抜け、高橋由(巨人)も故障辞退とあって少し寂しい気がするが、戦いは待ってくれない。ライバルの韓国、台湾のチーム状態も十分に研究しながら、最高の先発オーダーを組みたい。
大会日程を見ると、第1戦(1日)の相手は直前の1次リーグ1位国。韓国と台湾に比べれば粗さが目立つだろう。上位3チームが2勝1敗で並んだ場合、規定で得失点差が絡むだけに、第1戦は大差コールドの完封勝利をめざしたい。相手打線にとって対戦経験が少ない下手投げの渡辺俊(ロッテ)が先発に最適だろう。今季前半は不十分な状態だったが、後半は持ち味が発揮され、安心してみることができた。実戦感覚を取り戻し、球場の環境、風向き、土の状態への慣れなど、多くの選手を起用して第2戦以降の下地もつくりたい。
第2戦(2日)は韓国だ。昨年のWBCでも2度負けているだけに、一大決戦となる。「勝てる」という意識を、まずを全員に植え付けて臨みたい。勝負事は不安を持って戦ってはいけない。「勝つ方法論」をしっかりと練り、これを信じて戦うことが、特に短期決戦には絶対に欠かせない。
WBCで韓国相手に日本は、3月5日に東京ドームで2―3の逆転負けを喫し、15日の米・アナハイムでは1―2で失った。このことを忘れずに戦いたい。当然、僅差が予想される。韓国は昨年のメンバーからは少し力が落ちると見るが、彼らの「日本を倒す」という気迫は並大抵ではない。決して侮ってはいけない。
マウンドは力勝負ができるダルビッシュ(日本ハム)に託したい。今、一番乗っている投手だ。2年連続で日本シリーズも経験し、大一番で勝負をかけるにふさわしい。
第3戦(3日)の台湾戦も勝たなければならない。開催地という地の利もあり、当然、多くの地元ファンが集結しての応援は台湾選手に普段以上の力を与えることだろう。この熱気に負けるわけにはいかない。先発投手は、この試合も力で相手を押さえ込みたい事情を考えると、コンデション次第ではあるが、湧井(西武)を持ってきたい。若く、初経験ということもあり、不安がないではないが、ボールは間違いなく一級品だ。
3試合とも、中継ぎは右の小林宏(ロッテ)、武田久(日本ハム)と、左の高橋尚(巨人)、武田勝(日本ハム)。抑えには上原(巨人)、岩瀬(中日)、藤川(阪神)。ここは、十分、期待に応えてくれると思う。成瀬(ロッテ)の起用は韓国、台湾のメンバーを見ながら考えたい。
この投手陣なら、打線は2点、3点で勝負できるだろう。長打を期待する布陣よりも足を生かしたバント、ヒット・エンド・ランなどの機動力に富んだ打線、そして、投手陣を援護する守備をがっちり固めた戦いとなる。
いずれにしろ、予選リーグと決勝トーナメントがセットになっているWBCや五輪本番とは異なり、1敗もできない戦いである。代表チームの一人ひとりは、文字通り「選ばれたプレーヤー」であることを十二分に心に刻みつけて3連戦に挑んでもらいたい。
どの試合も接戦が予想される。それだけに、基本に忠実に、そして「チームとしての揺るぎなき戦い」が何よりも重要だ。その徹底が果たせれば、結果は必ず付いてくると思う。
■北京五輪アジア野球予選・日本代表最終候補選手(31人)
▽投手(14人) 上原、高橋尚(以上巨人)、川上、岩瀬(以上中日)、藤川(阪神)、ダルビッシュ、武田久、武田勝(以上日本ハム)、渡辺俊、小林宏、成瀬(以上ロッテ)、涌井(西武)、加藤大(オリックス)、長谷部(愛知工業大)
▽捕手(4人) 阿部(巨人)、矢野(阪神)、相川(横浜)、里崎(ロッテ)
▽内野手(7人) 井端、荒木(以上中日)、村田(横浜)、新井(広島)、宮本(ヤクルト)、西岡(ロッテ)、川崎(ソフトバンク)
▽外野手(6人) 森野(中日)、青木(ヤクルト)、稲葉(日本ハム)、サブロー(ロッテ)、多村(ソフトバンク)、和田(西武)
 衣笠 祥雄(きぬがさ・さちお) 野球解説者 1947年、京都市生まれ。65年に平安高校を卒業し、プロ野球の広島カープ入団。87年、現役引退。カープ黄金時代の主力選手として貢献し、最優秀選手賞(MVP)、打点王、盗塁王などのタイトルを獲得。2215連続試合出場は当時の世界記録で、「鉄人・衣笠」と称された。87年に国民栄誉賞、96年に野球殿堂入り。現在、朝日新聞紙上でのコラム執筆やテレビの野球解説で活躍中。 
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