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以食為天―食で読む中国

医食同源、強壮食の「狗肉」

朝日新聞編集委員:加藤千洋

 秋から冬にかけてが本番の広東の「野味」では狗肉(イヌ肉)料理も忘れられない。なぜ冬場がよいかというと狗肉を食べると体がぽかぽかと温まるからである。

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冬場、精のつく食材として人々に好まれるイヌ肉(広州市の清平市場で)
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派手な看板の狗肉料理専門店が軒を連ねる(延辺朝鮮族自治州延吉市で)=いずれも加藤写す

 中国では「医食同源」の漢方思想が庶民の間にもかなり浸透しているように感じる。病気の治療も毎日の食事も、健康を守るということでは根は同じとの考え方だ。

 北京の友人から「それは体を冷やすもの。冬に食べるのはやめなさい」などとよく注意されたものである。  で、中国で狗肉は体を火照らせる強壮食品と認識されていることは、毎度ご登場願って申し訳ないが、周恩来首相が北朝鮮を訪問した際の逸話でおわかりいただけよう。

 首相の主治医、張佐良氏の証言(「周恩来・最後の十年」日本経済新聞社刊)だが、招待した金日成主席は心から歓待し、ほとんど毎食、首相の宿舎で相伴した。メニューはいつも狗肉が主の料理で、あるときなどは「全狗席」という狗肉のフルコースが供されたという。そして張氏はこう回想するのだ。

 「周恩来はよくそれを食べたが、食後鼻血が出るなどの珍現象も起きなかった」

 さて、この狗肉を売っている上の写真は、広州市の清平市場での撮影だ。湯につけて毛をそられたイヌが生前の姿そのままに、あるいは解体されて、つり下げられている。愛犬家が卒倒しそうな光景ではある。黒板に1斤(500グラム)7元とある。数年前の相場で、ざっと百数十円だ。

 代表的な調理法といえば土鍋料理だろう。肉を骨付きでぶつ切りにして、各種の香料を入れて野菜とともにぐつぐつと煮込むのだ。

 ところで狗肉を食材とするのは広東料理の専売特許ではない。ほかの地方で多食するのは朝鮮族が多く住む東北地方だ。なかでも有名なのが吉林省の延辺朝鮮族自治州である。

 56民族からなる中国は多数派の漢民族以外の少数民族を優遇する政策として、ある民族が集住する地域に自治権を与えている。省レベルの自治区、その下に自治州、自治県と全部で3段階ある。

 延辺朝鮮族自治州の場合は総人口220万人で朝鮮族が約4割を占めて自治州が成立している。州内では朝鮮族の風俗や習慣が保護されている。

 中心都市の延吉市には狗肉料理店が集中している有名な一角がある。幅20メートルほどの道の両側に長さ100メートル余り、ずらっと料理店が並んでいる。ご覧の通り、チマ・チョゴリの美女がほほ笑む派手な絵看板が客を誘う。

 下の写真=いずれも加藤写す=の看板に「韓城高級狗肉」とある。韓城とはソウルのことだろうか。朝鮮半島でもイヌは食されるが、韓国では煮込み料理を「補身湯」とか「栄養湯」と呼ぶ。やはり栄養価が高い、強壮食と認識されている。

 昨今の延辺自治州は北朝鮮からの脱北者ですっかり有名になった。昨秋現地を訪れた際にちょっと悲しい話を耳にした。国境を越え、イヌ1匹を500元(6千〜7千円)ほどで売りに来る人々がいるのだそうである。

(02/14)





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