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以食為天―食で読む中国

政治舞台彩る宴席の珍味

朝日新聞編集委員:加藤千洋

 釣魚台国賓館が「迎賓館」と指定された59年は建国10周年。革命で誕生した新生国家は体裁を整えつつあった。この年、北京では10の記念建築を建てたが、その一つが天安門広場の西に完成した人民大会堂だった。

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壁一面に故宮の鳥観図が描かれた「北京の間」での宴会
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人民大会堂の大ホールの写真入りの菜単(メニュー)=いずれも加藤写す

 南北336メートル、東西206メートル、延べ床面積17万1800平方メートルという多目的ホールである。

 中国の国会である全国人民代表大会や、5年に1度開かれる共産党全国大会の議場となるなど、数々の政治ドラマの舞台となってきた。

 釣魚台とともに指導者が外国賓客を最高の格式で接待する場だが、この「国宴」で歴史上最も名高いのは「開国第1宴」であろう。49年10月1日、天安門の楼上で毛沢東が中華人民共和国の建国を宣言。その晩開かれた祝賀宴会のことだ。

 実は人民大会堂の誕生前だったので、会場は1900年創業の北京飯店。内外のゲスト600余人、毛沢東、劉少奇、周恩来、朱徳ら革命第1世代の首脳がホストをつとめた大宴会だった。

 この宴席では江蘇料理が供されたが、メニューを決めたのは江蘇省出身の周恩来だった。目玉はフカヒレのスープで、乾杯用のワインは時代を反映し、社会主義の兄貴分だったソ連のものが使われた(「中国料理の迷宮」講談社刊)。

 さて話を人民大会堂に戻すと、建物の内部には台湾、香港、マカオと中国大陸の31の省・自治区・直轄市の名称をそれぞれ冠した部屋がある。ほかに72年9月、日中国交正常化の共同声明の調印式が開かれた部屋など大小ホールも多数ある。

 おもしろいのは歴代指導者の何人かは、接客に使う部屋が決まっていたことだ。トウ小平は出身地ではないのだが、なぜか「福建の間」がお気に入り。部屋にはウーロン茶の特産地で、奇岩、奇峰で有名な武夷山の大きな絵が描かれていた。

 昨秋、故宮を中心に北京市の中心部の鳥観図が壁いっぱいに描かれた「北京の間」での宴会に参加する機会があった。

 ホストは外交責任者の唐家セン・国務委員(前外相)。シンポジウムに参加した日韓両国のメディア関係者が招かれたのだが、乾杯はワインだった。以前のようにアルコール度の高い白酒(焼酎)で乾杯を繰り返す手荒な歓迎は減り、スマートにワインが使われることが多くなった。

 宴席では中国外交、とくに北朝鮮問題の話題の方が「ごちそう」だったが、料理ももちろん良質で、牛ヒレ肉やエスカルゴを使った洋風のものや、カレー風味の鹿肉料理などが記憶に残った。

 ところで03年7月のことだ。北京を訪れた外国人観光客550人が予定にない人民大会堂の宴会に招かれた。3階の「金色の間」に案内され、フカヒレやアワビ、貝柱、鹿のアキレス腱(けん)などをつぼで煮込む福建名物の「仏跳墻(フォーティアオチアン)」など山海の珍味をふるまわれた。

 思わぬ「口福」に恵まれたのは、世界保健機関(WHO)が新型肺炎SARSによる渡航延期勧告を解除して最初に入国した、オーストラリアなど7カ国と香港の観光客だった。が、その年の中国の観光収入は約13%減った。

(03/10)





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