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以食為天―食で読む中国

悠々チベット巡礼の食

朝日新聞編集委員:加藤千洋

 新中国誕生後は各民族の「平等と団結」を国是としてきたが、なお漢族には少数民族に対する優越意識が抜きがたく存在する。

 中国の料理書では少数民族の「食」をほぼ扱わない。中国料理といえば、あくまで漢族中心の概念だ。最近の北京には地方料理店がどんどん誕生するが、チベット料理専門店というのはあまり聞いたことがない。

 ラサなど現地でも、これぞチベット料理といったものは発見しにくい。せいぜいが煮た羊肉の塊を手でちぎって食べる野性的な料理や、風干しした羊や牛の肉料理といったものだ。

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ケサランチェ家は豊かになって祭壇を立派にした

 ラサ近郊は平地もあって麦作や牧畜を中心とする農業が盛んな地域。そこで数年前、ケサランチェさんという40代半ばの働き盛りの農民の一家を訪ねたことがある。

 平均的な経営規模というが、20アールほどの畑で裸麦と小麦をつくり、羊15頭と牛7頭を飼育し、年間の農業収入は2000元(約2万6000円)ほど。ほかにマイクロバスの中古車を買って個人タクシーをやり、かなりの副収入があるという。

 台所を見せてもらった。チーズを作る撹拌(かくはん)器やバター茶を入れる数本の魔法瓶などに民族色がうかがえる。燃料は薪と固めて乾燥させた牛やヤクのフンだ。

 居間には金色に輝く祭壇がでんと置かれ、一家の厚い信仰心がわかる。5体の仏像の横に、中国政府が「分裂分子」と批判する亡命中のダライ・ラマ14世の小さな写真が1枚あるではないか。

 これは禁止されているのではと聞くと、主人の答えはこうだった。

 「公共の場所ではまずいが、信仰の対象として家の中なら……」

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山際まで続く裸麦畑=いずれもチベット自治区ラサ市で、加藤写す

 主に栽培する裸麦の粉は、一家の大事な主食ツァンパの原料だ。粉をわんに入れ、バター茶や塩茶を注いで手でこね、そのまま食べるのだ。ラサの周辺では野菜の栽培も盛んで、ジャガイモや大根、菜っぱ類もよく食べるという。

 副業で豊かになったケサランチェさんは小学生の2人の息子を「内地に送って高い教育を受けさせたい」と話していた。

 80年代半ば以降、北京や上海など19の省の小、中、高校に「チベット班」という特別学級が開設された。そこで1万人以上のチベットの少年少女が学んでいる。大学を終えてから故郷に戻り、発展のために働くシステムで、中国政府の民族政策の一環という。

 ラサの後、チベット第2の都市のシガツェを訪ねた。車で走った街道沿いでテントを張る夫婦連れに出会った。7匹のイヌをお供に連れた60歳すぎの2人は巡礼者だった。すでに出発後1カ月だが、ラサまで往復1年の計画という。

 あごひげを伸ばし、あかでテカテカのチョッキを着た夫にどこから来たのかと問うと、「とても遠い村からだ。ラサには親類もいるのでしばらく滞在する」と答え、夕食のツァンパを手でゆっくりと口に運んだ。

 富士山頂より高いチベット高原に住む人々の時間感覚は、私にはちょっとまねできない。

(05/18)





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