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以食為天―食で読む中国

羊肉、祈りで「仕上げ」

朝日新聞編集委員:加藤千洋

 回族は少数民族としては特異な存在だ。東西交易が飛躍的に発展した唐の時代以降、西からやってきたアラビア人やペルシャ人の子孫だからだ。

 彼らは往来・通婚などを経て長い時間に漢族の海にとけ込み、漢語を話すようになり、外見だけでは漢族と見分けがつかなくなった。だがイスラムの教えを守り、独自文化をはぐくんできた。

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村の長老、馬建興さん一家でスイカをいただいた

 回回とか回民とも呼ばれる回族は北京にも三十数万人を数えるが、総人口900万人のうち200万人が集中するのが寧夏(ニンシア)回族自治区である。

 シルクロード商人の末裔(まつえい)だからか、回族はウイグル族とともに商才にたけ、全国に同族ネットワークを張り巡らせている。中国紙によると、東南アジアから持ち込んだ麻薬を広東経由で香港へ密輸する危険な商売にも手を染めているという。

 自治区中央部の同心県は、その地下組織の拠点の一つとされ、5年前の初夏に訪れた時、警察が大々的な麻薬撲滅キャンペーンを展開していた。ただ誤解なきように付け加えれば、一般の回族は純朴で、とても清潔好きで、客人を温かくもてなしてくれる人々だ。

 その寧夏には漢方の薬材で料理にも使われるクコの実など特産品が多いが、全国の回族向けに毎日出荷されているのが良質の羊肉と牛肉だ。

 なぜ各地の回族が待ち望むかと言えば、寧夏の市場では早朝セリにかけて食肉処理する際、必ずアホンと呼ばれるイスラムの聖職者を招き、祈祷(きとう)を行う伝統が守られているからだ。

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市場に出荷された羊はイスラム聖職者の祈祷を待つ=いずれも寧夏回族自治区同心県で

 寧夏にはサウジアラビアなどイスラム圏の無償援助による教育施設が目立つが、最近の話題は台湾企業の投資だ。いま区都・銀川の北方の平羅県に約26億円で大規模な「イスラム牛羊肉交易市場」が建設されている。

 寧夏は果物生産も盛ん。とくに6月ごろから出回る紡錘(ぼうすい)形のスイカが有名だ。漢字で「西瓜」と書くのは、西方から伝来したことを意味する。

 「胡」がつく胡麻(ごま)、胡椒(こしょう)、胡瓜(きゅうり)なども同じだ。唐の都の長安では「胡食」が流行したが、周達生・国立民族学博物館名誉教授によれば、「胡」は外国を意味するエビスだが、当時は外国一般ではなく、ペルシャを指したという(農文協「世界の食文化・中国」)。

 さて一宿一飯をお願いした同心県郊外の村の民宿では夕食が羊肉の煮込みうどん。食後は中庭で真っ赤なスイカをたっぷりごちそうになった。

 翌朝は5時すぎに近くのモスクから流れるコーランの朗唱で目を覚ました。村のメーンストリートを歩くと朝市が出ている。小麦粉でつくる麻花という縄状の揚げパンをつくる老人の周りに子供たちが集まっている。

 いやに子供が多いなと思ったら訳があった。政府の厳格な計画出産政策、いわゆる「一人っ子政策」が、少数民族を優遇する政策の一環として寧夏では緩和されているのだ。回族は市部で2人、農村部では3人まで合法的に生めるという。

 成人男子が少ないのは、沿海部に出稼ぎに行っているからと聞いた。

(07/01)





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