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以食為天―食で読む中国

モンゴル式披露宴包で

朝日新聞編集委員:加藤千洋

 もうずいぶん前になるが、内モンゴル自治区の北部に位置する二連浩特市の郊外で、包(パオ)で行われたモンゴル族の結婚式に参加したことがある。

 モンゴル族は移動式住居の包とともに広大な草原で暮らす遊牧民とのイメージが強いが、包は春から秋の住まいで、冬季はれんがの柱に壁を土で塗った固定式の家で生活するのが一般的だ。

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「喜糖」が洗面器にいっぱい。包の披露宴

 四輪駆動車で道なき草原を行き、サハブチさん(54)の包に到着した。周辺に隣家は見あたらない。内部は分厚いじゅうたんが敷き詰められ、木製戸棚の上にテレビとラジカセ、そして手回しミシンが主な家財だ。電気製品は自家発電で使っているという。

 この日は21歳の長男に50キロ先の家から嫁を迎えるとあって、妻のパオダイさんと次男を含め、一家全員がブルー系統の民族衣装の正装だった。

 内部の空間は思ったより広く、テーブルにごちそうが並んでいた。ほうろうの洗面器2杯に盛りこぼれんばかりの「喜糖」というアメと角砂糖、ビスケット。「喜酒」と呼ぶ焼酎やたばこが並ぶのは漢族の式と同じだ。

 モンゴル風といえばポット入りの羊の乳でつくる茶が準備されていることか。固形状の茶葉を削って溶かし、ちょっと塩を加える。それにゆで上げた羊肉の塊。ナイフで切り取って手づかみで豪快に食べる。

 婚礼には親戚(しんせき)や地区の有力者らが酒やたばこ、布地などの贈り物をもって三々五々やってくる。披露宴は普通は2、3日続くという。

 かつてサハブチさんは人民公社に属する牧民で、公社員100人で1万頭の羊を飼っていた。改革が本格化した80年代半ば以降は個人で独立。平均して羊200頭、牛、馬、ラクダ各10頭を飼育。中古トラック1台で運送業も営み、中の上程度の収入を上げている。

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これから新婦を馬で迎えに行く新郎=いずれも内モンゴル自治区で、加藤写す

 「集団経営よりずっといい。長男には別の包を作るが仕事は一緒にやる。次男が家庭を持てば、家畜を分割するかもしれんが」

 ところで一家には北の隣国のモンゴル(いわゆる外モンゴル)に同じモンゴル族の親戚がある。ただし1961年以降、音信不通という。中国とソ連の関係が悪化し、ついに両国が断交に至った年だ。ソ連の衛星国だった当時のモンゴル人民共和国と中国の関係も悪化し、往来が途絶した。

 いま民主化したモンゴルは人口約250万人。中国国内にも内モンゴルを中心にほぼ同数のモンゴル族が住む。人的往来も復活し、経済関係も大幅に強化されている。

 中国国内の55の少数民族の内で、国境をまたいで隣国に同族が多数住むという例は、モンゴル族のほか西方のウイグル族、ハサック(カザフ)族、朝鮮族など少なくない。

 そうした少数民族社会には、中国の中央政府から離反しようとする様々な形の民族問題の存在が指摘されている。

 チベット族やウイグル族のように顕在化している例もあり当局は警戒を強める。だがモンゴル族の場合は、いますぐに民族矛盾が噴き出すような状況にはない。

(07/15)





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